“ガラス×樹脂”食器で世界に打って出る、石川樹脂が生かす部品づくりの技術力
石川樹脂工業(石川県加賀市、石川章会長兼社長)はガラスと樹脂を掛け合わせた新素材を用いた食器「ARAS(エイラス)」の海外展開を本格化する。2022年末に米国で開設予定のポップアップストアを足がかりに、23年以降に海外市場への本格進出を順次進める考え。樹脂成形の部品づくりで培った技術力で構築したブランドをもって、世界に打って出る。
エイラスは1000回落としても割れないという耐久性がある新素材が生むガラスのような光沢がある美しい造形と利用時の音鳴りのしにくさが特徴だ。20年3月に商品化して好評を得て、以降、ラインアップを拡充してきた。21年12月には原料の半分程度を林業で発生するスギの廃材にし、成形時に皮の成分がほのかな香りと表面に独特の風合いを出す「杉皮シリーズ」を追加。22年7月には海の生態系に悪影響があると懸念される海水のミネラル分を有効活用した「海水シリーズ」を発売した。商品群が充実し、国内市場でブランドが浸透してきたのを受けて、海外展開でさらなる飛躍を目指す。
石川樹脂工業は1947年に創業。当初は石川県の地場産業である木製漆器の製造・販売をしていたが、その後、樹脂製の漆器生産にいち早く取り組んだ。それで培った技術力で、新幹線やトンネルで使う送電設備部品やコイル部品といったインフラ向けの樹脂製工業部品を幅広く手がける。近年は、下請けからの脱却に向けた自社製品開発の取り組みに注力しており、エイラスの展開もその一環。現在は売り上げの5割程度を自社ブランドで占めるという。
日刊工業新聞 2022年11月07日