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「空飛ぶクルマ」は大阪万博で事業化なるか、丸紅が実証に挑む

「空飛ぶクルマ」は大阪万博で事業化なるか、丸紅が実証に挑む

バーティカル・エアロスペースの機体(イメージ)

2025年に開かれる大阪・関西万博に向けて大手商社が実証実験を進める。丸紅は「空飛ぶクルマ」の事業性を調査するとともに、社会受容性を高めるための実証実験を実施。伊藤忠商事は廃食油や非可食油などを原料にした燃料「リニューアブルディーゼル(RD)」で建設工事や輸送での脱炭素化を実証する。

丸紅は業務提携する英バーティカル・エアロスペース・グループと共同で、空飛ぶクルマの事業性を調査する実証実験を11月末から12月中旬にかけて実施する。実験ではヘリコプターで大阪府と、陸路ではアクセスが不便な和歌山県那智勝浦町の宿泊施設を往復。事業化する場合の離着陸候補地の利便性と価格設定の妥当性などを検証する。

大阪府から那智勝浦町の宿泊施設に自動車で移動すると約4時間かかるが、バーティカル・エアロスペースの機体を使用すると約30分間で到着するという。ただ、同社の空飛ぶクルマは25年に完成を目指していることから、今回はヘリによる模擬飛行となる。今後、75人を上限に宿泊とのセットで参加者を募る。

8月に開設した愛知県内のリニューアブルディーゼル供給拠点(佐藤石油店提供)

利用料金についてはヘリを1時間チャーターすると30万円以上かかるが、宿泊費を除き、今回は「高頻度な運航を実現した場合に採算の合う設定にする」(航空宇宙・防衛事業部航空第三課の吉川祐一課長)。数万円になる見通しで、将来は「1キロメートル当たりの料金をタクシーと同等にしたい」(同)。

25年から事業化する計画で、陸路だと不便で、2地点間の往復需要がある場所を対象に航路を設定していく。新型コロナウイルス感染症による移動制限が緩和される中、インバウンド(訪日外国人)需要も期待しており、市場を観光から立ち上げ、ビジネスユースに拡大したい考えだ。

23年2月には提携する米リフト・エアクラフト(テキサス州)の機体で、空飛ぶクルマの静音性や安全性、電波への干渉などについて社会受容性を高める実証実験を実施する。同社の機体は1人乗りで、観光地での遊覧飛行など、バーティカル・エアロスペースの機体とともに事業化を進める。いずれも大阪府が公募した「空飛ぶクルマ都市型ビジネス創造都市推進事業補助金」に採択されたことを受けて実施する。

伊藤忠商事と伊藤忠エネクスは建設・輸送分野で、リニューアブルディーゼルを活用した脱炭素化の実証を進める。軽油と混ぜる必要がなく、軽油の代替としてそのまま使用できるほか、温室効果ガス(GHG)排出量を90%削減できるのが特徴だ。

使用するRDは世界最大のRD燃料メーカーであるフィンランドのネステ製。エンジン・車両・機械でのRDの適合評価を進めながら、大阪府内の中小企業と協業し、RDの配送体制確立と建設工事や輸送での利用実証に取り組む。

これにより建設工事や物品・資材・来場者の輸送などによるGHG排出削減に結び付ける。

22年度中に大阪府で供給体制が整い次第、試験的に給油を始める。本格的な供給は万博の建設工事がスタートする23年度以降を見込む。給油は建設現場に簡易タンクを設置して給油する方法、もしくは現場にミニローリーで配送し、ローリーの給油機で直接給油する方法を検討している。

大阪府が公募した「カーボンニュートラル技術開発・実証事業」に採択されことを受けて実施する。

日刊工業新聞 2022年11月02日

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