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「若年層に刺されば、カメラは必ず復活できる」(ニコン社長)

牛田一雄氏に聞く。一般の人が楽しめるものに変えることが最大の課題
「若年層に刺されば、カメラは必ず復活できる」(ニコン社長)

ニコンの牛田一雄社長

 ―中国でデジタルカメラの販売を伸ばしていますが、経済成長鈍化の影響は。
 「農村部に近い3・4級都市で展開が遅れていたが、販売チャンネルの開拓で中・高級機種を中心に順調に伸びている。今後はEC(電子商取引)サイトとの連携も強化する。成長は鈍っているが、大市場には変わりない。要求に合う製品を出していけば、全く悲観する状況ではない」

 ―デジカメ事業の成長性をどう見ますか。
 「スマートフォンとインターネットとの連携で、写真に対する間口は確実に広がっている。ネット・スマホ世代に合致した方法で提案すれば、必ずもう一度復活できる。この1―2年はそのニーズに対応した新製品をどんどん出していく時期。数字的には一度かがむ格好になるが、2017年度にジャンプする。シニアやプロが中心のカメラを、どう一般の人が楽しむものに変えていくかが、我々の最大のテーマだ」

 ―モノのインターネット(IoT)の普及でセンサー需要が伸びていますが、半導体露光装置事業の状況は。
 「少量多品種生産に適した200ミリメートルウエハー向け装置の需要が伸びている。中古機ビジネスが好調で、通期の予想を上振れしそうだ。この流れが続けば新製品の展開も考える」

 ―買収した眼底カメラメーカーの英オプトスとの相乗効果をどう出していきますか。
 「現在、ニコンの技術を入れた上でどんな製品を出すか、議論の真っ最中だ。眼底カメラはさまざまな疾患の診断に利用できるため、一般的な診療所などでも使われていくだろう。既存の眼科医向けの高級機だけでなく、汎用―中級機の分野に展開する必要がある」

 ―販路や生産面の統合案は。
 「販路面はオプトスが自力で展開している部分については、あまり介入しない方が得策。日本やアジアの開拓はニコンの販路を使う。生産面では、将来的にニコンのサプライチェーンの活用を提案し生産コストを下げる。オプトスの既存工場で増産対応できなくなれば、ニコンの工場で製造することも考える」

【記者の目・早期にオプトス統合効果を】
 カメラ事業の安定が重要性を増している。新規顧客である若年層にアプローチするには、これまでの枠をはみ出すような製品も必要だろう。一方、新規事業である医療事業の行方は、まだ不透明な部分も多い。すでに市場を確立し、高い利益をあげているオプトスとの統合効果を、目に見える形で早期に出していくことが求められる。
(聞き手=政年佐貴恵)
日刊工業新聞2016年1月29日 電機・電子部品面
政年佐貴惠
政年佐貴惠 Masatoshi Sakie 名古屋支社編集部 記者
売上高の約7割をカメラ事業が占めるニコンは、カメラ事業での収益強化と、成長に向けた新規事業の育成を同時に進めなければいけない状況。ただカメラは市場縮小もあり不振が続く。スマホではデュアルレンズ搭載がささやかれ、LYTRO(ライトロ)のような新興メーカーは、デジタル技術を武器に従来のカメラにはない発想で攻勢をかける。老舗光学メーカーゆえの難しさはあるだろうが、だからこそできる大胆な発想の商品戦略を期待したい所だ。

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