ニュースイッチ

加熱なしに乳化する、ポーラが独自開発したスゴいポリマー

加熱なしに乳化する、ポーラが独自開発したスゴいポリマー

水と油の間にM-ポリマーの粒子が結合し層を形成

ポーラ・オルビスホールディングスは独自開発したポリマー「M―ポリマー」を乳液やクリームの乳化剤として活用し、二酸化炭素(CO2)排出削減と廃棄時のリサイクルを確立する。M―ポリマーは水と油を物理的に結合する「ヘテロ凝集」により、CO2排出を伴う加熱工程なしに乳化できる。さらに高濃度になると油と分離するため、リサイクルも可能になる。乳化剤として数年内にも実用化を目指し、さらに次段階のリサイクルの実現に移行する。

現在、乳化には親水性と親油性を持つ界面活性剤を使用。安定した混合状態を保持するため加熱処理を行う。また混合した水溶液は結合性が高いため分離が難しく、リサイクルでのネックになる。

M―ポリマーは粒径20ナノメートル(ナノは10億分の1)ほどのポリマー。サイズの異なる粒子同士が吸着するヘテロ凝集により、大型粒子の油分と結合し乳化する仕組み。常温で物理結合するため加熱を必要としない。乳液やクリームを製造するための界面活性剤を代替すればCO2排出を大幅に削減できる。

また乳化した水溶液の濃度を高めると、M―ポリマー同士がジャングルジム構造を形成し、油分と分離することを発見。使用期限などで廃棄する乳化物の水分を揮発させて、油分と分離することで新たな乳化物を作製できる。同ポリマーを開発したポーラ化成工業が検証した結果、リサイクルした乳化物は通常のモノと同等の品質であることを確認した。

M―ポリマーは化粧水に滑らかな感触を付与するために開発した。一部商品に使用しているが、乳化剤には用いていない。乳液やクリームに適用するための品質検査などを進めている。さらにリサイクルについてスケールアップ実証や原料ごとの抽出方法などを検討し実現を目指す。

日刊工業新聞 2022年10月26日

編集部のおすすめ