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【連載】アジアの見えないリスク#6中国事業、「再検討」の選択肢を考える

文=舟橋宏和(KPMG FAS・ディールアドバイザリーディレクター)
 リポジショニング(再検討)、中国で事業活動を行っている日本企業に必要なアクションはこの言葉に集約できる。中国の経済成長に陰りが見える中、多くの日系企業が中国市場からの撤退を検討しているとの報道もあるが、KPMG中国のグローバル・ジャパニーズ・プラクティス中国総代表の高部一郎は、「世界経済が大きく変化している中、中国は消費マーケットとして最重要国の一つであることは間違いない。

 したがって、多くの日本企業にとって中国抜きに今後の成長を語ることは難しく、完全撤退を真剣に考えている日本企業はほとんどないというのが実態ではないか」と語る。

 実際、我々のところにも日本の本社から中国事業に関する相談が非常に増えてきており、図にある通り、リポジショニングのオプションに関するシミュレーションを行ってクライアントの意思決定をサポートしている。

 以前の中国投資ブーム時には、日本企業は独資ではなく、中国企業(中方)と組んで合弁会社形態(JV)を選択するケースが多かった。メリットとして中方の持つ資産や政府とのネットワークの活用が期待できた点などがあった。

 一方で、中方への技術流出や中方の出向者が財務担当者となった場合に会社の管理状況の把握が困難となることなどに留意する必要があった。JVに関するリポジショニングのオプションとしては、(1)持ち分の買い取り、(2)現状維持、(3)持ち分の売却、の三つのパターンが想定される。

 (1)の場合、意思決定スピードを加速させることが可能となるが、独資化のメリットと通常よりも多く支払うプレミアム額を比較して妥当性を検討することが重要となる。

 逆に(3)の場合、低額での持ち分譲渡のみでなく、業務改善に伴う支出の負担を強いられるケースもある。その際、外部専門家の協力を得て交渉を行うことも重要であるが、譲渡によってリスクを遮断できる点をどの程度評価するかが判断の分かれ目となることが多い。

 リポジショニングの際には、中国市場の成長性だけではなくグローバル戦略も勘案して、客観的な前提条件の下で事業性とリスクの評価を行い、事業の継続・拡大を目指す場合には本社からのモニタリングが機能する体制を構築することが成否を分けると言える。

<毎週月曜日に連載予定>
<略歴>
邦銀勤務を経てKPMGに入社し、クロスボーダー案件を中心として事業再生やM&A、ジョイント・ベンチャー(JV)に関連した事業計画策定業務などのアドバイザリー・サービスに従事。KPMGアジア・パシフィックにおけるJVプラクティスのメンバー。
日刊工業新聞2016年1月29日 国際面
村上毅
村上毅 Murakami Tsuyoshi 編集局ニュースセンター デスク
記事にあるように「リポジショニング(再検討)」が中国事業のいまのテーマだろう。多くの企業にとって、中国事業は分岐点にあり、企業が置かれた立場に応じた舵取りが求められる。記事は示唆に富んでいる。

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