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1世紀にわたりトップを走る刃物メーカー

東洋刃物(富谷市、清野芳彰社長)は、1925年(大正14)に設立した工業用機械刃物メーカー。東北帝国大学(現東北大学)の金属材料研究所所長で、金属学の権威だった本多光太郎博士の提唱で、当時としては珍しい産学連携企業として産声をあげた。1世紀にわたって培われたノウハウは顧客の信頼を勝ち取り、工業用機械刃物製造の分野で国内トップを走る原動力となっている。

ソルトバス炉

東洋刃物が扱う刃物は、スマートフォン用の部品を切断する情報産業用刃物のほか、製紙パルプや食品、鉄鋼用など、多岐にわたる。産業用機械および部品なども同社の主事業を構成する。

東洋刃物の強みは高い技術力と、それに裏打ちされた顧客の要望への対応力の高さにある。刃物の取り付け作業時間を短縮する製品の提供をはじめ、東北大学との共同研究による錆びにくい金属素材の開発や刃の長寿命化なども実現した。同社の技術は幅広い分野で採用され、現在約3800社と取引をしている。

1973年富谷新工場全景

同社は22年8月に東京証券取引所スタンダード市場への株式上場を廃止。フェローテックホールディングス(HD、賀賢漢社長)の完全子会社となった。清野社長は今回の子会社化を新たな成長につながる第一歩と捉えている。フェローテックHDの子会社になることで、さまざまな恩恵を得ることができるという。

清野社長が熱視線を送るのは、フェローテックHDの持つ強固な材料調達網とのシナジーだ。同社は海外、特に中国に複数のグループ企業を持つ。21年に中国・杭州市にグループ会社を設立した東洋刃物は、フェローテックHDの中国の第5世代通信(5G)、電気自動車(EV)関連の顧客基盤を活用し、顧客や部材の調達につながるネットワークの発展を狙っている。

グループ会社の事業を素早く軌道に乗せることに加え、グローバルな調達網を使った原材料の仕入れコストの削減にも期待をかける。東洋刃物が戦略製品に定める超硬刃物の製造に使う超硬材を、「中国現地の調達ルートの紹介などから低コストで入手することができるようになる」と清野社長は話す。

東洋刃物の清野芳彰社長

 東洋刃物はフェローテックHDのグループ会社になることで、製品ラインアップの拡充を進める。フェローテックHDの中国子会社には、東洋刃物が扱ってこなかった丸鋸の製造販売を行う会社がある。東洋刃物は今回の子会社化にあたり、丸鋸刃物の製品分野をカバー。グループ全体での拡散戦略が可能となり、大手同業他社と遜色のない製品ラインアップを実現する。同社の中国子会社では、数年後には現在の日本国内に匹敵する売上に達すること目標に掲げる。

東日本大震災から、長く厳しい経営計画を余儀なくされてきた東洋刃物。その影響により、昨今のモノづくりでは当たり前となっている自動化や省人化への対応投資に大きく出遅れた。この課題の解決に、フェローテックHDが半導体ウエハーや絶縁放熱基板などで培った自動化、可視化に技術・ノウハウが貢献する。同社の技術を生産ラインに移植し、東洋刃物は自動化・省人化を進める。生産性の改善や受注機会の拡大にもつなげる考えだ。

浸炭炉

東洋刃物は人材の質の向上にも注力する。子会社化による人事交流の活発化から、人材の有効活用につなげる。清野社長は「他の子会社との多様な人材の交流で、従業員たちのモチベーションおよびスキルの向上が期待できる」とし、新たな技術の開発や既存技術の強化、経営体制の改善を期待する。

「会社を変えるならば、自らの行動も変えていかなければ」―。清野社長は子会社化に際して、従業員たちにこう語った。フェローテック傘下になったとはいえ、全てが自動的に変わるわけではない。「自分たちが主導してこれまでの働き方や会社の体制に変革を起こすことが、今回の子会社化における重要な点だ」と清野社長は捉えている。チャンスを最大限に生かすため、東洋刃物は変革を続けていく。

東洋刃物(株)をもっと知りたい方はこちら
 https://www.toyoknife.co.jp/
 (株)フェローテックHDをもっと知りたい方はこちら
 https://www.ferrotec.co.jp/

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