「レクサスRX」は世界初方式のランプ採用…加速する「ヘッドランプ」の高機能化
自動車用ランプ各社が、ヘッドランプの高機能化を加速している。設計自由度の高い発光ダイオード(LED)の特徴を生かし、配光を制御する配光可変ヘッドランプ(ADB)の開発を推進。完成車メーカーが死亡事故の減少に向け安全性能を充実させる中、ヘッドランプの高度化でニーズに応える。ADBは国内で高価格帯モデルを中心に導入が始まっており、今後は低コスト化や海外向け製品の開発で採用車種を拡大する。独自の技術で競争力を高め、収益基盤の底上げにつなげる。(増田晴香)
LEDランプは長寿命・省電力といった特徴を持ち、従来のハロゲンランプに代わり主流となりつつある。LEDで配光の制御性が向上したことから、対向車や歩行者がまぶしくないよう高精度に配光を制御するADBの開発が活発化。常にハイビームを維持でき、ドライバーの視認性を高める一助となっている。
市光工業は数万ピクセルに分割された光を個別に制御する技術「HDライティング」を開発した。ハイビームでは従来の光量を保ちつつ、相手がまぶしくないよう対向車や先行車に当たる光の一部分を遮光することが可能。ロービームへの切り替えも不要にした。路面にレーンガイドの情報を照射したり、前方の歩行者の発見を手助けしたりする機能も付与した。
従来の12分割で制御するADBユニットに比べ、大幅に解像度を高めたことで緻密な制御を実現。近づく対向車の形に合わせて遮光部分の面積を変えられるほか、標識に当たる光量を絞って反射によるまぶしさを抑えるなど、光のオン・オフや明るさを自在に調整し、安全性の確保やストレス軽減に寄与する。
自動車メーカーへの提案もすでに開始。普及を見据えた価格設定と数万ピクセル分割の高解像度を両立した製品展開で「高価格帯モデルへの採用を目指す」(箕川彰一マーケティング部長)。
小糸製作所は、高速回転するブレードミラーにLEDの光を照射し、光の残存効果で前方を照射する「ブレードスキャン」を手がける。12個のLEDで他の光源約300個分と同等の高精細な配光を達成した。
LEDを増やせば解像度を高められるが、コスト面などに課題があった。世界初のスキャン(残像)方式を採用することで光源の数を抑えつつ、きめ細かな配光制御につなげた。すでにトヨタ自動車の高級車ブランド「レクサス」のスポーツ多目的車(SUV)「RX」などに採用されており、順次対応車種を拡大する方針だ。
同社は2030年度のヘッドランプに占めるADBの受注比率について、現行の5%から20%に引き上げ、収益力を高める方針だ。
ADBは現在、法規制で承認された日本や欧州、カナダで使用が可能。世界2位の自動車市場である米国でも2月に法制化されたが、現状は「製品が同国の厳しい法規に対応できていない」(小糸製作所)という。今後は米国の法規をクリアできる製品の開発も検討し、海外市場での普及拡大を狙う。