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花王の体験型サロンから見えてくる「ヘアケア市場」二つの変化

プレミアムブランドの脱同質化、マスプロモーションからSNSへ
花王の体験型サロンから見えてくる「ヘアケア市場」二つの変化

心地よい香りに癒やされる

 花王が、ヘアケア新商品のプロモーションの一環として東京・表参道に期間限定で開設している「ASIENCE MEGURIサロン」。2015年10月のオープン以来、口コミで話題を集め、応募は定員の10倍以上。これまで4000人近くが訪れたという話題のサロンを体験してきた。そこからみえてくるヘアケア市場の変化とは-。

長澤まさみになった気分?


 ブランドショップが立ち並ぶ表通りから一本入った閑静な住宅地の一角にある隠れ家的なサロンを訪れたのは1月下旬。美容師さんによるシャンプー、ブローを経て、本格的な撮影体験も。商品のイメージキャラクターの長澤まさみさんと同様の背景で、洗い立ての髪をなびかせたポスターに仕上げてくれる。

 ヘアケアブランド「アジエンス」の新シリーズとして2015年10月に発売された「MEGURI(めぐり)」は、「より高い美容意識を持つ女性」がターゲット。体験型サロンで消費者に直接、商品を訴求する背景から、ふたつの時代の変化がみえてくる。

 ひとつは、高価格ヘアブランド市場の変化だ。2003年に誕生した「アジエンス」は、「メリット」や「エッセンシャル」といったマスブランド商品で知られる花王にとって高級イメージ、高価格帯への挑戦だった。消費者になじみ深いシンボルマーク「月のマーク」をあえて使わない販売戦略を採用したのもこのためだ。

 それから10年あまりー。花王はヘアケア市場でトップシェアを維持するものの一般的に商品単価600円以上とされるプレミ商品の競争は激化。市場が拡大する一方で、「マスブランドと同質化している」(同社)との危機感が「アジエンス」の派生シリーズの形で「MEGURI」という差別化戦略を求める形となった。

 もうひとつの変化は宣伝手法の多様化だ。初代アジエンスの発売当時、イメージキャラクターに起用された人気中国人女優、チャン・ツィイーさんは、これまでのヘアケア商品にはなかった東洋的な美しさを、艶やかな黒髪で表現していたことが記憶に残る。

ターゲットはUー40


 だが、今やマス広告だけでなく、消費者の購買行動に影響を与える手法として企業が重視するのがブログ記事やSNS投稿による情報拡散。今回のサロン体験でも、スタッフが率先してスマートフォンで画像撮影してくれるなど、体験談を発信することへの期待がひしひしと、伝わってきた。

 広報部の武田葉子さんによると、「MEGURI」が想定するのは美髪への投資意欲が高い20代後半から30代の女性とか。40代、しかもSNSにも疎い身としては、射程外かと少々、悲しい気もしたが、髪を美しく保ちたいという意欲は若い子たちに負けていないと、サロンを後にした。

 「MEGURIサロン」のオープンは2月末まで。要事前予約。
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神崎明子
神崎明子 Kanzaki Akiko 東京支社 編集委員
花王が満を持して「アジエンス」を市場投入した当初のことをよく覚えているだけに、この10年の競争環境の変化に驚きました。女性は美容への投資を惜しまない一方で、移り気な消費者の心をつかみ続けるロングセラー商品を育てることの難しさを実感した取材でした。

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