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品質不正17拠点・197件…三菱電機の最終調査報告が明らかにした不正の傾向

品質不正17拠点・197件…三菱電機の最終調査報告が明らかにした不正の傾向

会見する漆間社長

三菱電機は20日、一連の品質不正問題について外部専門家による調査委員会から受領した最終報告書を公表した。品質不適切行為は全22製作所の内、17拠点で発生し、累計件数は5月時点より70件多い197件となった。最終報告とそれを受けた外部専門家によるガバナンスレビュー(GR)委員会の検証結果を踏まえ、新たに10人の役員と元役員に対し、報酬の減額や返納要請の処分を発表。2021年の処分発表分と合わせ計22人の役員が処分対象となった。

GR委員会の検証では課長時代にタービン発電機の試験成績書の虚偽記載に関与していた元社長の柵山正樹シニアアドバイザーやそのほかの役員についての善管注意義務違反(法的責任)は認められないとした。

21年の調査委員会設置後も複数の製作所で品質不正が継続していたことに関する漆間啓社長の経営責任も認められないとの判断を示した。ただ、柵山氏は辞任する意向で会社も了承した。

最終報告では、実質的な品質に影響がないことを理由に、顧客と契約した試験や検査の手順を軽視するなどの不正の傾向が明らかになった。報告を受けてGR委員会は品質不正の背景にガバナンス体制、内部統制システム、組織風土などの課題や、本社と製造現場との断絶といった三菱電機特有の要因が存在すると指摘。ガバナンス体制をモニタリングする機関の設置や品質に関する意識改革に向けた全社的取り組みなど、複数の提言を行った。

とりわけ現役の役員については、事業本部の枠を超え、品質不正問題に関する有事意識を継続して持つように求めた。

三菱電機は1年4カ月に及んだ調査を終了するが、品質風土、組織風土、ガバナンス体制の改革を社長直轄の組織を中心に継続し、進捗(しんちょく)を取締役会がモニタリングして社内外に情報開示していく方針。特に品質不正の発生自体を未然に防ぐ仕組みの構築に力を入れる。今後、グループ会社について調査し、まずは50%以上出資する41社を選んで品質管理体制などを確認する。三菱電機本体も定期的な調査を継続するほか、生産委託先企業に対しても品質管理体制の確認を進める。

漆間社長は「上にものを言えて、失敗を許容でき、課題を共有してともに解決する風土に変えないと会社の再生はない」と述べ、改革を推進する決意を示した。

日刊工業新聞2022年10月21日

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