支援が充実してきたニッポンの再生医療ベンチャー

阪大VCが細胞培養基材のマトリクソームに1.5億円投資

 大阪大学ベンチャーキャピタル(OUVC、大阪府吹田市)は28日、運営するOUVC1号ファンドから、阪大発ベンチャー企業のマトリクソーム(大阪府吹田市)に1億5000万円を投資すると発表した。同社は阪大の細胞培養技術の事業化を目的に2015年12月に設立されたベンチャー企業。投資する1億5000万円は事業の育成に充てる。

 阪大蛋白質研究所の関口清俊教授らの研究グループとニッピが共同で開発した細胞培養用基材をマトリクソームが販売する。また、既存の細胞培養基材をもとに新たな商品開発を進める方針。

 細胞培養用基材はiPS細胞(人工多能性幹細胞)など、再生医療の基盤となる幹細胞を効率よく増殖・分化できる製品。京都大学iPS細胞研究所(CiRA)や製薬会社の研究所などへの販売提供を想定している。

 将来の上場も視野に事業展開を強化する。マトリクソームの山本卓司社長は「細胞培養用基材の市場は20年頃には国内で、1800億円程度まで伸びると見込まれている」としている。海外に向けての販路拡大にも力を入れる考えを示した。

行政も後押し。厚労省が振興策


日刊工業新聞2016年1月14日


 厚生労働省は、革新的な医療製品を生み出す医療ベンチャーの振興策を夏までにまとめる。優れた医薬品の候補物質や技術を医療ベンチャーが開発し、大学や研究機関、外部企業と相互に働きかけながら実用化される環境が確立されるよう、課題と必要な政策をまとめる。医療ベンチャーに焦点を当てた振興策づくりは、厚労省では近年なかった。

 議論の場として、医療ベンチャー経営者を中心とする懇談会を設け、2015年12月末に第1回会議を開いた。夏までに中間報告する。

 医療製品は、医薬品や医療機器、再生医療製品のこと。医療製品は、ベンチャーが開発したものが大元になり、資金力や製品化のための開発力に優れた大企業に導出や共同開発をして、実用化されるケースが多い。また大学や研究機関は、疾患の原理や原因を解明し、優れたシーズの提供者となる。

 さらに最近は、3Dプリンターやロボットなどの技術革新がベンチャーにも広がっている。ベンチャーを中心に、優れた医療製品の実用化例が相次ぐ環境をつくる。

 懇談会のメンバーは、理化学研究所の技術を発展させ、iPS細胞(人工多能性幹細胞)による医薬品を開発するヘリオスの鍵本忠尚社長、革新的な医薬品や医療機器を優先審査する厚労省の「先駆け審査指定制度」対象品目に選ばれた開発品を持つ創薬ベンチャー、ノーベルファーマ(東京都中央区)の塩村仁社長、米国食品医薬品局(FDA)の医療機器審査官を日本人で初めて務めた、日本医療機器開発機構(同)の内田毅彦社長ら12人。

日刊工業新聞2016年1月29日3面
日刊工業新聞電子版

日刊工業新聞 記者

日刊工業新聞 記者
01月30日
この記事のファシリテーター

幹細胞を一定の品質で正確に量産できれば、再生医療のカギを一つ握ったことになる。そして幹細胞を培養、増殖し、分化誘導(目的の細胞に変化させること)するための基材も重要なカギ。再生医療は、まだ確固たる産業ではないが、産業として成立した時に参入しても遅い。創薬活用ではなくヒトの治療に使うためには、臨床研究・試験を積み重ね、薬事規制のあるべき姿が議論され、それを満たしながら技術や製品が固まっていくからだ。OUVCの母体である大阪大学は、澤芳樹教授をトップ(医学部長兼医学系研究科長)とし、再生医療で世界的に評価される研究成果が多い医学部を擁する。だから再生医療ベンチャーは大いに成り立つ。ただ、研究成果を挙げる大学の先生と企業経営者に必要な能力は別物。医学を見る目と、企業経営を見る目の両方を機能させることの重要さだけは強調したい。
(日刊工業新聞社編集局第ニ産業部・米今真一郎)

この記事にコメントする

  

ファシリテーター紹介

記者・ファシリテーターへのメッセージ

この記事に関するご意見、ご感想
情報などをお寄せください。