ダイハツの京都工場、50年ぶり大幅改修で凝らした国内生産で生き残る工夫
ダイハツ工業が、トヨタ自動車向けの受託車など小型車6車種を生産する京都工場(京都府大山崎町)を約50年ぶりに大幅改修した。塗装工程と組み立て・検査工程を4階建ての新工場棟に集約。投資額は約350億円で、国内生産で生き残る工夫を凝らした。軽自動車で培った独自のクルマづくりを武器に、環境対応や人手不足・高齢化といった課題克服に挑む姿を、京都工場で追った。(大阪・広瀬友彦)
「ダイハツのモノづくりの源泉はSSC(シンプル・スリム・コンパクト)。これを徹底追求する」。奥平総一郎社長は強調する。SSCは従来の半分の面積・投資額でこれまでと同等台数を生産する、ダイハツ流モノづくりの考え方だ。軽自動車を生産するダイハツ九州・大分第2工場(大分県中津市)で2007年に確立、国内外工場で浸透を図る。
京都工場の改修でもSSCを基本に生産性やエネルギー効率の向上を進めた。組み立て工程でコンベヤー搬送を縮小し自動搬送台車の採用範囲を拡大、ラインを柔軟に変更できる。車1台分の部品を事前セットした独自台車の活用や作業指示書のデジタル化などで作業効率を向上。作業工程数で従来比15%減、生産リードタイムは同30%減を達成した。
ダイハツは30年までに国内の新車すべてをハイブリッド車(HV)を含む電動車にする方針だ。京都工場でも今後、電動車の拡大が想定され「どんな車が来ても流せる工夫をした」(生産調達本部の植原裕喜統括部長)。
トヨタグループで目指す35年の工場カーボンニュートラル(温室効果ガス排出量実質ゼロ)にも取り組む。京都工場は特に塗装工程で環境対応を強化。塗装ブースの長さを従来比12・8%短縮し、新工場棟の熱源を上層階に集中するエネルギーの効率管理や独自フィルターで空調リサイクルを実現、太陽光発電も活用した。京都工場の二酸化炭素(CO2)排出量で13年比42%削減にめどをつけた。
今後の人手不足に対応した生産工程の変更にも取り組んだ。塗装の手塗り工程を大量のロボット導入で自動化した。シニアや女性の作業員活用を想定し、歩きながらの締め付け作業を廃止して乗用コンベヤーで人と車が同期できる作業体制にした。無理な姿勢の作業も現場の声を聞き改善した。
京都工場の年間生産能力は改修前の約1・7倍となる23万台に拡大。ただ部品不足など不安定な生産状況は続く。「厳しい環境だが、(変化への対応は)モノづくりを革新するチャンス。京都工場の改修で得た新技術やノウハウは国内外の工場、関係会社にも展開する」。奥平社長は貪欲にモノづくり改革に挑む覚悟だ。
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