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マツコロイドと人間の決定的な違いを考える

「ロボット未来フォーラム」で語られたこと。(後編)
 2015年12月5日、「2015際ロボット展」内にて、「ロボット未来フォーラム」が開催された。ロボットをとりまくクリエイター3人が、それぞれの活動を通して感じ、考え、表現してきた「ロボットと人間」との関係性についてディスカッションした。

【前編はこちら http://newswitch.jp/p/3425

<登壇者>
クリプトン・フューチャー・メディア 代表取締役 伊藤 博之 氏
ロボティクス ファッションクリエイター きゅんくん
日本テレビ放送網 制作局「マツコとマツコ」担当プロデューサー 吉無田 剛 氏

<モデレーター>
日刊工業新聞社 ニュースイッチ 編集長 昆 梓紗



人間らしくないところが魅力?


――まず吉無田さんに話を伺いたいのですが、マツコとマツコの実験の中で印象的な実験はなんですか?

吉無田:実際アンドロイドを突き詰めていくと人間に行きつくというか。すごい面白かったのが、マツコロイドに怪談は出来るのか?という実験です。

 怪談と言えば稲川淳二さんがレジェンド。僕らは稲川さんの怖い話は「怖いな」くらいしか、普段はそこまで深くは考えないですよね。実際、ロボットを使って稲川さんのように怪談をしようとなると、音声プログラミングなどを通して、僕らが気づかなかったところまで工夫していたんだとわかる。

 何十本も稲川さんの怪談を観て、どうやったらマツコロイドで怖くなるのかを考えた時に気づいたのが、稲川さんは例えば本当にクライマックスの時には瞬きをしないんですね。マツコロイドは人間に近づけようと思って瞬きを何秒に一回するという機能を搭載しているんですけども、逆にマツコロイドの通常の機能でやると何にも怖くないので、逆に瞬きの機能を取ると。人間が普段持っている機能を取ることでそこに恐怖が生まれていく。というのを稲川さんは多分、裏で計算してやっているんですね。

 当初アンドロイドの科学番組をイメージしていたんですけど、人間の匠の技のほうがフィーチャーされていって。人間にどこまで近づけるかというのを考えた時に、ロボットはそういった点ではほど遠いなと感じたのが大きな収穫でした。

伊藤:おっしゃる通りでね。人間ってすごいんですよ。コミュニケーションをするときは、その人の表情や声質、微妙な言葉尻やイントネーションから怒っているのかそれとも共感しているのかすごい察するんですよね。

 でもコンピュータの場合はアーっていう声を録音しても、笑いながら言っているのか、怒りながら言っているのか、波形で解析しても全く分からないんですよ。だから人間と対等に対話するのはすごい難しいんです。

きゅんくん:マツコロイドでの人生相談のときに、石黒先生が「マツコロイドは人間らしさが少し欠けているからすごく話しやすい」と言っていて。人間らしさが欠けることでプラスに働くということで、私も人間らしさのないロボットを作っているので共感したというか、嬉しく思いましたね。

吉無田:人間らしさってなんだろうっていうのをまじまじと考えることって、普段ないじゃないですか?でも、そこを掘り下げていくとまだまだいろいろな分野に可能性があるなと感じて、面白かったですね。
ニュースイッチオリジナル
昆梓紗
昆梓紗 Kon Azusa デジタルメディア局DX編集部 記者
ロボットを考えることは人間を考えることにつながります。ロボットが今後、社会に受け入れられていく過程で人間との関係は幾度となく議論されていくでしょう。ロボット開発者だけでなく、幅広い分野の人がロボットに興味を持っている今だからこそ、分野を超えて議論していってほしいと感じました。大変面白いディスカッションでした。

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