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次世代自動車・航空宇宙の需要狙う、最先端材料技術たちの効果

次世代自動車・航空宇宙の需要狙う、最先端材料技術たちの効果

配線構造一体のCFRPドローン(羽生田鉄工所)

先端材料と加工技術の展示会「SAMPE Japan 先端材料技術展2022」が19日、東京ビッグサイト(東京都江東区)で開幕した。出展社は次世代自動車、航空宇宙、グリーンなどの分野で、軽量化やリサイクルなど最終製品の高付加価値化に貢献する材料技術を提案した。新しいニーズが発掘され、材料の用途が広がることが期待される。

旭化成は金属鋳造部品並みの高強度を実現できる炭素繊維複合樹脂材料「UDテープ」を開発した。一方向の炭素繊維にポリアミド樹脂を含浸した材料。重ねて加工する際にテープ間を強く接着でき、加工品として強度が高い。プラスチック部品の部分補強など軽量化材料としてスポーツ用品や建材、自動車部品などに提案する。

担当者は「課題だった加工条件の改善を進めてきた。企業と事業化につながる情報交換をしたい」と意気込む。UDテープは端材・廃材のリサイクル技術の開発も進行中だ。

三菱ガス化学は3Dプリントを活用したCFRP成形技術などを紹介した

住友ベークライトは絶縁性や耐トラッキング性に優れたジアリルフタレート(DAP)の長繊維材を開発。特性を生かしつつ、アルミダイカストと同等の耐衝撃性を実現できる。射出成形に対応し、電動車部品などへの採用を見込む。

三菱ガス化学は3D(3次元)プリントとプレス成形を組み合わせた炭素繊維強化プラスチック(CFRP)成形技術を紹介した。繊維配向の制御が可能になり、オートクレーブ法よりも強度を高められる。グループ会社を通じて展開し、ウエハーリングなど半導体製造工程や航空宇宙など高機能品分野で活用を見込む。

羽生田鉄工所(長野市)は配線構造一体でトポロジー最適化したCFRPを使った飛行ロボット(ドローン)を出展した。配線を縫い止めてオートクレーブ成形で一体化でき、筐体(きょうたい)内の空間確保や組立工数削減につながる。「一定の空間確保が必要な人工衛星などに応用できる」(羽生田大陸専務)と期待をかける。同社のオートクレーブを使用した熱硬化材料の成形体験も開催する。

電動化の進展などでさまざまな製品・部品の軽量化要求は高まっている。また、再生材やリサイクルを前提とした材料の採用を求める動きも強まっており、各社は開発を急ぐ。脱炭素社会を見据えた新たなニーズにモノづくりの力でどう応えていくのか。素材関連メーカーの材料技術が試されている。
日刊工業新聞2022年10月20日

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