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最近、クルマづくりでヒットを飛ばすマツダが挑む燃費のよい4輪駆動

トルク配分の最適化で2輪駆動超え目指す。4駆の新市場を生み出すか
最近、クルマづくりでヒットを飛ばすマツダが挑む燃費のよい4輪駆動

剣淵試験場(北海道剣淵町)でのテスト

 マツダが2輪駆動より燃費の良い4輪駆動の開発に力を入れている。4輪駆動と言えば力強い走りが売りだが、2輪駆動と比べると、車体は重くなって燃費は悪くなりがち。そんな4輪駆動の常識を覆そうとする取り組みだ。安定した走りと燃費の両立に挑んでいる。

雪道の“歩き方”


 4輪駆動が最も発揮されるシーンが雪道だ。雪道の駆動技術の仕組みを考える際に「人が雪道を歩くのに例えるとわかりやすい」と話すのは廣瀬一郎執行役員。人は自然と『認知・判断・操作』を行っている。「認知」は肌で感じる温度や路面の見た目で状況を認識すること、「判断」は踏み込んだ時の足裏の感覚で予兆を読み取ること、「操作」は歩幅を小さくしたりべた足になったりして、最適な歩き方で歩くことに該当するという。

 これを車に置き換えたのがマツダの4輪駆動技術「i―アクティブAWD」だ。現行のスポーツ多目的車(SUV)「CX―5」などに搭載している。まず認知。外気温度、車の加速度、アクセルペダルの位置からワイパーの作動状況まで計27種の情報を集めて、路面の状態や運転手の意図を認知する。

 次の判断のステップでは、認知から得たデータを元に、後輪にどれだけのトルクを配分するのが最適なのかを瞬時に計算する。その計算速度は1秒間に200回におよぶ。時速30キロメートルの時は、約4センチメートルごとに計算していることになる。

 最後の操作のステップでは、計算を元にトルクを実際に配分する。ここでポイントになるのは、常に小さな駆動力を後輪に掛けておき、”遊び“をゼロにしておくこと。瞬時に狙いのトルクを出すためだ。パワートレイン開発本部の八木康氏は「安全に安心して乗ってもらうためには少しも滑らせることはできない」と開発スタンスを強調する。こうした認知・判断・操作の各ステップでの技術のきめ細かさを、安定した走行だけでなく燃費の向上にもつなげている。

開発に手応え


 燃費向上に効くのが判断のステップで行うトルク配分だ。高い頻度で計算し適時・適量のトルクを後輪に配分することで、無駄なエネルギー損失を省くことができる。部品の小型・軽量化もできた。例えばエンジン動力をタイヤの駆動力に伝える歯車。トルク配分を最適にできると歯車への負荷が減るため、強度を保ちつつ小型化することができる。歯車を包むケースも薄くできた。

 雪道での上り坂では現行モデルですでに2輪駆動より燃費が上回っているという。八木氏は「将来は雪道だけでなくいろいろなシーンで2輪駆動を上回ることができる」と話し、さらなる燃費向上に向けた開発に手応えを感じている様子。4輪駆動は価格が高いのもネックだが、燃費の良い4輪駆動が商品群としてそろえられれば、消費者にとっては2輪駆動と並んで有力な選択肢になり得る。マツダの挑戦は4輪駆動の新たな市場を生み出す可能性がある。
(文=池田勝敏)
日刊工業新聞2016年1月26日自動車面
日刊工業新聞記者
日刊工業新聞記者
最近、車を買った時のことを思い出した。4輪駆動仕様もあったが、価格が高いから眼中に入っていなかった。燃費が良い4輪駆動があれば惹かれれるかもしれない。 (日刊工業新聞社第一産業部・池田勝敏)

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