あなたの会社は大丈夫?システム監視の新潮流とは
ITの世界には新語が次々に現れます。同じ概念を別の単語で表現する場合も少なくなりませんが、これまでにない概念である場合がほとんどです。最近、よく使うようになった用語のひとつが「オブザーバビリティ」です。 「ITインフラにはオブザーバビリティが不可欠」「「単なる監視ではなくオブザーバビリティが重要だ」「オブザーバビリティがあれば大規模トラブルは避けられた」などのような説明を耳にしたことがある人も少なくないでしょう。システム監視の用語なのですが、業界内の人を除けば、おそらく多くの人は「オブザーバビリティーって何?」というのが本音ではないでしょうか。、オブザーバビリティーとはそもそも何なのか。なぜオブザーバビリティが必要なのか、また従来の「監視」との違い、どんな利点があるのか。一緒に見ていきましょう。(SolarWinds Head Geek サシャ・ギース)
企業のITを取り巻く環境
① 高度化・複雑化が進むITシステム
近年の企業ITの変化には目を見張るものがあります。昨今の主な変化としては以下のようなものが挙げられ、これらの急激な変化により、企業のITシステムが入り組んだことでサイロ化が進み、管理が複雑化しています。
・クラウドの利用
・高度化、急増するアプリケーション
・多種多様なデバイスの利用
・マルチメディア型コミュニケーションツールの登場
・在宅勤務の普及によるリモートアクセス
・レガシーシステムとの共存
② 障害対応の複雑化
ITシステムが複雑化するのに伴い、新たな技術やツールを採用すればするほど、問題発生要因も増加します。これまでに発生しなかった新たな問題が現れたり、複雑に入り組んだシステムの相関関係が見えなかったり、障害時の原因究明と対策がますます困難になっています。
今後は、システムの一部だけを見るのではなく、より広い視野での障害対策が求められます。しかし、このように複雑化したシステム全体を管理するのは容易なことではありません。SolarWindsが行ったハイブリットITの複雑性の管理に関する調査によると、回答者の59%がアプリとインフラストラクチャ(情報システムを稼働させる基盤となるサーバーやネットワークなど)の半分以上を可視化できていないと回答しています。。特に大企業では、インフラストラクチャの大部分を可視化していると回答したのは28%にとどまりました。このような状況の中で出てきたのがオブザーバビリティという概念です。
③ サイロ化された障害対応
多くの企業では、このように高度で複雑化された企業システムを、ネットワーク担当、アプリケーション担当、クラウド担当、拠点ごと、などの担当に分けて、それぞれが別のツールを使用して管理・運用しています。このようにサイロ化した運用では、情報共有不足による業務の非効率が発生しやすく、また自分の担当外の部分が影響して障害がおきたとしても、根本的な障害の発生原因を見つけることが困難です。
オブザーバビリティとは?監視との違いは?
かつてITシステムがまだ単純であったころは、個々のモジュールでの障害検知でおおよその対応が可能でしたが、現在の複雑なシステムでは、根本的な原因を究明するのが難しく、より複雑なシステムのための監視の仕組みが求められています。
現在、多くの企業では、システムが正常に稼働しているかどうかを継続的に監視する「死活監視」やメトリックのしきい値による監視により、システム状況をチェックしています。これは人間の健康診断に例えると、死活監視は、看護師さんが、「元気ですか?」と患者に問いかけるようなもので、メトリックによるしきい値の監視は血圧や体重を計測し、異常な値を示していないかを確認しているイメージです。しかし問いかけや血圧、体重の数値だけでは、何か異常があると判断できたとしても原因までは分かりません。
オブザーバビリティでは、これまでの監視により得られた情報をもとに、ITシステム全体の状況を見える化し、問題の原因を特定します。これはMRIで脳の中を可視化することと同じように、状態を見える化し、いつ、どこで何が起きているのか、現象には相関関係があるのか、なぜ障害がおきているのか、どのように解決するべきなのかといったプロアクティブな問題解決に対する情報を管理者に提供します。
今後、企業のITシステムが複雑化することはあっても、簡略化することはありません。複雑化するシステムを最適に運用するには情報を統合、分析し、アクションを起こす必要があります。つまり、これまでみてきたようにオブザーバビリティが不可欠になります。システムを運用していれば問題は必ず起きます。重要なのは不具合や障害の発生をいち早く検知し、原因を究明し、対応することです。私たちはシステム監視の考え方を再考する時期を迎えています。