“理系予備軍”と「聴覚」の不思議な関係
「数学が得意だったら理系に進んでいた」という“理系予備軍”の割合は女性で男性より高く、このタイプでは情報収集の手段として「聴覚」に強みがある人が目立つ―。こんなユニークな傾向を、横浜国立大学成長戦略教育研究センターの為近(ためちか)恵美教授が、オレンジテクラボ(東京都千代田区、宮﨑淳最高経営責任者〈CEO〉)の協力を得て明らかにした。女子生徒の理系進学増に向けて、数学の学び方を工夫するといった切り口に、注目が集まりそうだ。(編集委員・山本佳世子)
この進路選択のアンケートは、理系女性増の方策を検討するのが目的だ。大学など研究機関の男女共同参画関係者を中心に2020年12月から約2カ月間、ウェブで実施した。有効回答は517件(人)、大学が多いため理系が43%、文系・その他(以下、文系と表記)が57%だった。
注目は文系の人に尋ねた「数学が得意だったら理系に進んでいたか」だ。293人のうち「はい」と答えたのは29%。男性は25%なのに対し、女性が32%と差が見られた。また「分からない」は28%。合わせて半分以上で、理系進学の可能性があったといえそうだ。
さらに「情報を知覚する手段で最もやりやすいもの」を尋ねた。517人のうち最多は「図・表・絵・写真などを見る」(象形視覚)で理系の74%、文系の49%が選んだ。次に多いのは「文字や文章で読む」(言語視覚)。「音声情報として耳から聞く」(聴覚)は理系6%、文系12%だった。
しかし文系における「数学が得意だったら理系に進んでいたか」の回答との関係をみると、「はい」の人の24%が「聴覚」を選択。「分からない」では9%、「いいえ」では8%だったのとは異なる傾向だった。
理系予備軍に聴覚タイプが多いことから、数学の学びでの工夫が有効な可能性がある。例えば優れた講師の講義受講や、音声メディアでの自習を重視するというものだ。公式の暗記も口に出しながらが向く人が多そうだ。
また聴覚タイプは「単元の中で苦手な部分が明確」「論理立てた学びより、繰り返し解いてパターンを覚える学びが有効」という傾向もわかった。理系進学を後押しする数学の学習法という、新たなポイントが話題となりそうだ。
