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AIの創作物は著作権保護の対象にするべきか

政府の知財本部で検討へ
 知的財産戦略本部(本部長=安倍晋三首相)は人工知能(AI)が制作した創作物を著作権保護の対象とするべきか検討作業に着手する。27日に開く「次世代知財システム検討委員会(中村伊知哉委員長=慶応義塾大学教授)」でAI研究者や法律家、出版社などの有識者が議論する。2015年度内に方向性をまとめ、16年度に策定する知的財産推進計画に反映する。

 論点はAIが人間と同レベルの品質で創作した場合、その創作物を制度上どう扱うか。さらにAIが生み出す大量の創作物を、人間の能力を前提とした現行制度に適用するのが妥当かなど。現在は人がAIを道具として使って制作した創作物には、その操作をした者に著作権を認めている。しかし、人間よりはるかに生産効率の高いAIが実現すると、大量の創作物をAI操作者が独占でき、人間の創作者を圧迫する可能性がある。

 短編小説を書くAIを開発する公立はこだて未来大学の松原仁教授(人工知能学会会長)は、「人が少し助ければAIはそれなりの文章は書ける」という。また、米国では統計情報などをAIが記事化する取り組みもある。

 ただ、人間の関与の割合で著作権の有無を判断することも現実には難しい。著作権は無断利用や複製などから、創作者を保護し、文化を発展させる仕組みとして作られた。創作者の権利と創作物の多様性、コンテンツ産業の競争力をいかにバランスさせるか。議論の行方が注目される。
日刊工業新聞2016年1月27日1面
日刊工業新聞記者
日刊工業新聞記者
検討会では議論が終わらず次回持ち越しになりました。漫画家の赤松健先生は「AIがキャラクターの台詞や振る舞いを自動生成して、キャラクターが 独り立ち(キャラ立ち)すれば最も価値を生む。保護や減税で促進すべし」と展開、カドカワの川上量生社長は「既にコンテンツは氾濫していて、守り たいコンテンツのみ登録制にしないと機能しない。国際協調が難しくなるが」と指摘しました。人間と機械どちらが作っても創作性を評価できないた め、その都度裁判で、その時代の社会通念にあわせた判断を仰ぐという道もあるそうです。内閣官房の横尾英博知的財産戦略推進事務局長は「著作権の 本質見直しを迫る議論になる」と評価していました。事務局は名案が一つでも多く欲しい状況です。 (日刊工業新聞社編集局科学技術部・小寺貴之)

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