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エンジン不正の日野自動車、世界販売は前年比プラスのワケ

エンジン不正の日野自動車、世界販売は前年比プラスのワケ

22年3月期に国内販売台数の半分近くを売り上げた主力の小型トラック「デュトロ」(日野自動車提供)

エンジン不正に揺れる日野自動車の世界生産・販売台数が、前年比でプラスを維持している。海外の生産・販売台数が大幅に伸長し、不正で減少した国内生産・販売台数分を吸収。親会社のトヨタ自動車のまとめによれば、エンジン不正が発覚した3月から8月までの半年で、国内生産・販売台数は大きく下落したものの、海外生産台数が前年同期比55・4%増、海外販売が同18・8%増と大幅に伸びたため、世界生産・販売台数がともに前年を上回った。ただ、海外でもエンジンをめぐる問題を抱えており、先行き不透明感は今後も残りそうだ。(石川雅基)

日野自は3―8月にかけて、エンジン不正で国内生産・販売台数が大きく落ち込んだものの、海外事業がけん引し、世界生産台数が同4・5%(3639台)、世界販売台数が同0・7%(547台)増えた。台数ベースだが、国内の普通トラック(積載量4トン以上の大型・中型トラック)一部車種の生産・出荷停止分を、海外事業と国内の小型トラックで穴埋めした格好だ。

トラックの需要が高まるインドネシア、タイなどアジア市場の需要を手堅く取り込んだことや、北米市場での生産再開が寄与した。

日野自への納入比率が高い、埼玉県のある中堅サプライヤーの幹部からは「海外事業が好調なため、不正発覚前と同程度の忙しさ」と海外事業に支えられている足元の状況を明かす。

好調な海外事業だが、必ずしも順風満帆とは言えない。北米市場でエンジンの排ガス試験対応をめぐる司法省の調査や米企業による訴訟などを抱えており、きな臭さが漂っているためだ。

国内大手証券会社のアナリストは「米司法当局の調査で問題が見つかれば、排ガス規制が厳しい欧州や豪州などの先進国でも市場への悪影響が予想される」とみる。さらに米国で問題が見つかった場合、「他国でも当局の調査につながる可能性もある」と指摘。米司法当局の調査が新たな問題の火種になりかねないだけに「かなりシビアな状況」と分析する。

国内市場が見通せない日野自にとって、売り上げの約6―7割を占める海外市場が今後の活路となる。それだけに、米司法当局の判断は大きな転機となる可能性をはらんでいる。

日刊工業新聞2022年10月7日

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