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産廃激減、橋梁修繕会社の危機感が生んだ鋼橋修繕工法の効果

産廃激減、橋梁修繕会社の危機感が生んだ鋼橋修繕工法の効果

循環式ブラスト工法での作業。研削材が破砕しないため、粉じん発生が少なく作業環境改善の効果もある

主に橋梁の修繕業務を手がけるヤマダインフラテクノス(愛知県東海市、山田博文社長)は、2018年に国連の持続可能な開発目標(SDGs)宣言を策定し、関連の取り組みを進めている。その中核となるのは、橋桁を鋼材で作った鋼橋を修繕する「循環式ブラスト工法」の普及だ。施工時に生じる産業廃棄物を従来より大幅に減らす同工法を広めることで、SDGs実現への貢献をしている。

鋼橋の修繕で主流なのは、腐食予防のために研削材を噴射して古い塗装とサビを取り除き、再塗装をする従来のブラスト工法だ。

研削材に単価が安い非金属系のものを使用するので、塗装面に衝突すると破砕し、剝がれ落ちた塗装カスと混じる。分別は困難で、1000平方メートル分を施工すると約40トンの研削材が丸々産廃になる。さらに塗装カスの約1トン分も加わり、合わせて41トンもの産廃が発生する。

「こんなことを繰り返していたら、ゴミだらけになる」―。危機感を持った山田社長が試行錯誤の末にあみだしたのが循環式ブラスト工法だった。

研削材には耐久性がある金属系を導入。噴射後は塗装カスと混じるものの、金属ゆえに選別装置で分離し、回収して再利用できる。産廃になるのは研削材から選別した塗装カスのみ。1000平方メートル分の施工で生じる産廃量は従来の41トンから1トンへと激減した。

07年の初施工以来、徐々に実績を重ねてきた。16年には同社が主導して一般社団法人「日本鋼構造物循環式ブラスト技術協会」を設立。加入する同業者に対し、同工法に必要な機材やノウハウの提供を始めた。現在では修繕工事の3割程度で同工法を採用するようになった。

「この工法に1社でも多く取り組んでもらうことが廃棄物の排出抑制につながっていく」と山田社長は強調する。今は同工法について、グリーン調達法の特定調達品目にする働きかけを進めており、さらなる普及促進を図っている。

日刊工業新聞2022年8月2日

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