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「軽トラ」生かすダイハツ、新たなMaaS戦略の狙い

「軽トラ」生かすダイハツ、新たなMaaS戦略の狙い

移動販売車レンタルで地域活性化(左は奥平ダイハツ社長)

ダイハツ工業は9月、軽トラックの移動販売車をレンタルするサービスを始めた。軽自動車の新たなMaaS(乗り物のサービス化)として、小売り事業者のニーズを取り込もうとしている。軽は生活の「足」として頼られるだけに、地域活性化の課題解決に役立てる余地が大きい。販売店とともにソリューションへの意識改革を進め、成熟した軽市場の活性化を目指す。(大阪・田井茂)

ダイハツの移動販売車レンタルは「ハイゼット トラック」に、商品台や倉庫、宣伝ボードなどを設置し、移動先で容易にセッティングできるのが特徴。消費者の元に出向く移動販売は以前からあるが、高齢化やコロナ禍などで改めて関心が高まっている。ダイハツの奥平総一郎社長は「インターネットで何でも届く時代で地域の小売りは厳しい。しかし移動販売は客と直接触れ合え、希望者が増えている。事業者と消費者の架け橋になり、地域の暮らしを豊かにしたい」と意気込む。

一般的な移動販売車が数百万円とされるのに対し、消費税込みのレンタル価格を1日1万3200円、1カ月6万6000円と安価にした。東京、埼玉、千葉、京都の販売店から開始し、全国6000店舗へ拡大する。販売店がニーズを吸収し、新たな顧客開拓の好機とするのも狙いだ。

京都ダイハツ販売(京都市右京区)の池辺聡志社長は「2021年6月から実証に取り組み、計10事業者が参加した。これまでの商売では縁のない顧客とつながれた」と強調。野菜を直販する農家や、量り売りの乾物・総菜屋などが利用する。

足元ではキッチンカーなど移動販売車の開業支援サービス会社が急増し、競合が激しい。地域に密着する軽販売店として顧客に寄り添うサービスを提供できるかが成否のカギとなる。ダイハツはウェブサイトで開業相談や事業者間の情報共有、出店告知をサポートする。販売店は売れそうな場所やイベントを探して紹介するほか、販促品や移動販売車の追加部品貸し出しなどで支援する。販売品や店員の紹介も検討する。

事業説明会などの実施で23年度に1000台、25年度に3500台の貸し出しを目指す。移動販売の架装装置だけのレンタルも22年度中に始める。架装の維持・保守を重視するためレンタルとした。ダイハツの武田裕介取締役営業CS本部長は「移動販売は季節事業者も多く、レンタル数の増加が見えてくる」とそろばんをはじく。

軽トラは農業人口減少などでダイハツとスズキのみにメーカーが減った。ただ近年は農業の大規模化やキャンプなどの趣味で需要が持ち直している。移動販売車の事業化では「スピード感を持ってやるため、バーチャルカンパニーを作り準備してきた」(奥平社長)。販売店や消費者とともにソリューションを考える事業戦略が、軽トラの国内需要の持続にもつながりそうだ。

日刊工業新聞2022年10月6日

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