「破たん」劇的ビフォーアフター!JALは変わったか(1)終わりなき企業再生

フィロソフィーの体現者はCA

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客室乗務員も単なるサービス要員でないことを強く意識
 「お買い上げいただいた商品はラッピングも致します。お土産にいかがですか」―2月、夕刻に成田を出てシンガポールに向かう日本航空(JAL)711便の機内では、客室乗務員が乗客に機内販売をアピールする姿があった。2010年の経営破たん後、JALの機内販売には目標額が設定され、客室乗務員にとって、売り上げ達成が死活問題。売り込みにもおのずと熱が入る。「人材の力が最大の財産」―。社長の植木義晴はこうした社員の努力の積み重ねが、再生の原動力と話す。規制と競争がいびつに絡み合う航空業界。公的支援で再生した負い目を背負いながら、全社員の意識を根幹から変え、収益性・サービスで世界一を目指す、JALの終わりなき企業再生への挑戦を追う。

 【京セラ哲学】
 「機内販売の売り上げなど考えたこともなかった」。客室本部客室品質企画部機内販売グループで機内販売の商品企画を担当する菅野伊佐美は、経営破たんの際、国内線を中心に乗務する客室乗務員だった。
 JAL再建を託された稲盛和夫は、社員の仕事に対する姿勢をたたき直した。その両輪となったのが、稲盛が京セラ経営者として築き上げた経営哲学をカスタマイズした「JALフィロソフィ」と「部門別採算制度」だ。

 【乗務員に目標】
 菅野は「JALフィロソフィにある『採算意識を高める』や『売り上げを最大に』と言った項目で、客室乗務員もただのサービス要員でないことを強く意識したと話す。
 部門別採算制度の導入で、接客のプロフェッショナルである客室乗務員にも10人程度のグループごとに売り上げ目標が設定された。菅野の上司に当たる商品企画総括マネージャーの岩見麻里は「破たん前も目標はあったが、いくらなのか気にしたことがなかった」と話す。それが今は、全体の目標から1便ごとの目標もあり、さらに1人当たりの収支がいくらになるかも、各自が個人手帳に記録するという徹底ぶり。岩見は「客室乗務員がお客さまからお金を受け取る機会は機内販売しかない。そこに向ける意識ははっきり変わってきた」と意識改革の浸透を実感する。
 
 【常に危機感】
 JALは16年度を最終年度とする中期経営計画で、営業利益率10%以上と自己資本比率50%以上の維持を目標に掲げる。15年3月期は営業利益率12・4%、自己資本比率は52・4%に達する見通しだ。堅調な業績の中でも植木は「(経営再建は)全社員が意識を改革し、継続できるかがすべて。社員の意識が変わらなければ、5年後、10年後また経営破たんに陥る」と警鐘を鳴らす。会社更生法を適用した上場企業139社のうち、再上場できたのはJALを入れて10社。比率はわずか6・5%だ。国の手厚い支援でよみがえったJALだが、危機感は常にある。植木は「すべての企業が公的支援を受けられるわけではないことを理解している。企業価値を高めて、ご恩返しできる会社になるしかない」と、JALに向けられる厳しい眼差しを受け止める。(敬称略)
(次回は明日掲載)

日刊工業新聞2015年03月04日1面

COMMENT

明豊
執行役員 DX担当
デジタルメディア局長

日刊工業新聞社で連載している企業ドキュメンタリー「挑戦する企業」。3月からスタートした日本航空編では、劇的に変わった企業体質、依然として残る重い十字架などを個々のファクトを通じて担当記者がレポートしています。

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