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高精度プラ研磨、秘密兵器は“紙”

三幸電機製作所、大雪に日に社長自らが従業員をクルマで迎えに
 ハードディスク駆動装置(HDD)用プラスチック治工具の研磨精度をルーペで確認する(写真)。目標はバリの厚さ0・1ミリメートル以下。三幸電機製作所は樹脂製品をランナーから切り離すカット工程と0・1ミリメートル以下の精度を出すための研磨工程を人の手で行っている。

 HDD用プラスチック治工具には通電性のある樹脂が使われる。静電気が基板上のICチップに伝わる前に除電するためだ。ランナーから切り外した後、通常は目の細かいサンドペーパーで研磨するが、「通電性素材を使っているため、コンタミ(微細ゴミ)がICをショートさせる可能性がある」(近藤伸二社長)と指摘する。

 コンタミを出さずに研磨できる材料として発見したのが、市販のコピー用紙だった。樹脂製品をコピー用紙に押し当てて目標精度を探る。「頼りになるには経験だけ」と話す。

 同社には入社15年のパート従業員が2人いる。大雪が降った18日には出社が困難な従業員のために、近藤社長が自宅まで迎えに行った。「熟練者は得がたい貴重な戦力だから」と柔和な表情で答える。
 <会社概要> 
▽社長=近藤伸二氏▽所在地=東京都武蔵村山市、042・560・9405▽売上高=3500万円(15年5月期)▽従業員=8人▽創業=65年(昭40)5月

日刊工業新聞では毎週火曜日に「モノづくり支える町工場の技」を連載中
日刊工業新聞2016年1月26日 中小企業・地域経済面
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役デジタルメディア事業担当
こういうのは人じゃないと出来ない。「頼りになるには経験だけ」ー。今もてはやされている「第4次産業革命(インダストリー4.0)」は大手製造業の価値が相対的に低下し、このような町工場の価値が高まっていくと、なんとなく思っている今日この頃。

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