YouTubeで映像・音楽の2次利用を検出するAIの効果
ヴォバイルジャパン(東京都渋谷区、大藤健社長)は、動画投稿サイト「ユーチューブ」で、映像や音楽などコンテンツの2次利用を検出し、保有者に収益を還元するサービス「ライツID」を提供している。検出には人工知能(AI)を使ったサーチ方式を活用。引用から得た収益は、音楽レーベルやアニメ製作会社が新たなコンテンツを生む原資として役立ち、エンターテインメント業界の発展を支える。
コロナ禍になり、家で過ごす時間を楽しむ人が増えた。その“お供”の一つがユーチューブ。日本国内の18歳以上の月間利用者数は、2022年5月時点で7056万人(ニールセンデジタル調べ)。これに伴って、違法動画への対策など環境整備は重要性が増している。
ユーチューブは元々、音楽や映像の特徴的なデータを基に2次利用を検出する独自の仕組み「コンテンツID」を持つ。音楽や映像がそのまま引用されている動画の検出が得意だが、全ての2次利用を見つけられるわけではない。
そこでコンテンツIDを補う形で機能するのが、「ライツID」だ。動画のタイトルや概要欄に記載した説明文、リンク先、コメントなどからワードを抽出。動画の関連ワード集をAIで作成し、ユーチューブ内で引用されているかどうかの手がかりにする。複数の映像や音楽を混ぜたマッシュアップ動画も見つけられるようになった。
コンテンツの2次利用が発覚した場合、動画に広告を掲載した企業からユーチューブを運営する米グーグル経由で、引用者に支払われる広告収入の一部を保有者が得られる。そのほかに「使用を許す」「動画を削除する」といった選択もできる。
ライツIDは、米国で主要映画会社など20社以上が導入。日本では22年7月末時点で10社が導入している。だが、引用による収益化は日本ではまだ浸透しておらず「海賊版に甘い」と誤解を受けることもあるという。大藤社長は「日本の海賊版の定義を見直す時期に来ていると思う。引用から収益を得ることは否定されることではない」と強調した。
ライツIDを活用した次の一手もある。収集したビッグデータ(大量データ)を基に、視聴者数を増やすためのコンサルティングサービス「チャネルID」を22年後半に開始予定。対象は法人だ。引用が多いワードは人々の関心が強い傾向にあることに着目する。大藤社長は「ユーチューブ全てを見渡せるのが強み」と自信をのぞかせる。(熊川京花)