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泥臭さが基本、オムロンが提示する「オートメーションテーマパーク」

ビッグデータはカイゼンの最大のツール
泥臭さが基本、オムロンが提示する「オートメーションテーマパーク」

投光モジュールを組み立てる自動機

 ビッグデータが製造現場を変えようとしている。その最前線にいるのが、オートメーション向けの制御機器を手がけるオムロン。製造ラインで必要となる各種センサーの生産を担う綾部工場(京都府綾部市)は、自らもユーザーとしてビッグデータの活用に乗り出している。題して「オートメーションテーマパーク」。自社で成功モデルを作り上げ発信することで、同社ユーザーの自動化をけん引していくのが狙いだが、その試みは地に足が付いた堅実なものだ。

 人間に例えると、血圧から心拍数、体温、血糖値まで、あらゆるデータが仕事をしている間に収集されているような感じだ。綾部工場で取り組んでいるビッグデータの活用は、ファイバーセンサーの投光モジュールを精密に組み立てる自動機から各種センサーを通じてリアルタイムに情報を収集する。もともとの2ラインに、1ライン増設する計画があったことから同工程を選んだ。既存ラインは2014年12月に対応を完了、新ラインは15年夏に完成した。

 投光モジュールは3ミリメートル角の微細なデバイスで、レンズやリフレクター、パッケージなどを正確に位置決めしながら接着剤で固定する。自動機の中ではロボットが左右のテーブルを往復しながら組み立てていく。この動きをセンサーですべて丸裸にし、見えないところまで「見える化」することで「改善サイクルを速くする」(高見真司綾部工場生産管理部生産技術課長)。

 集めるデータはサーボモーターのトルクや速度、位置、4台のカメラで撮影した画像ファイル、接触センサーによるレンズ押し付け高さ、形状計測センサーによるワーク高さ、MEMS(微小電気機械システム)フローセンサーによるエア流量、圧力センサーによるエア圧など。これら幅広いデータをプログラマブルロジックコントローラー(PLC)を経由してデータベースへ送り込む。モーターから取り込むデータはミリ秒単位。設備の挙動をCADデータに落とし込んでコンピューター上で再現することも可能になるという。

 これらデータ活用で狙うのは、4M(人、機械、方法、材料)変動による品質のバラつきの制御。これまで不良品の発生や、装置の停止を受けてから原因を突き止め、改善につなげていたが、どうしても後手に回ってしまう。そこで徹底した見える化によって装置の挙動のわずかなブレから改善を先回りする。ビッグデータによって技術者はより改善に専念できるようになる。「本質的な改善ならばQ(品質)、C(コスト)、D(納期)すべてを最適化できる」と高見課長は話す。

 綾部工場は草津工場(滋賀県草津市)と並ぶ、制御機器事業の国内拠点で、「グローバルものづくりコア技術拠点」として位置づけられている。そのためこれまでも生産性向上や省エネを追求した改善活動を率先し、社外からも見学者を受け入れアピールしてきた。年間1000人程度が訪れているが、その多くから「結構泥臭いことをやってますね」と言われるという。
日刊工業新聞2016年1月25日 モノづくり面
尾本憲由
尾本憲由 Omoto Noriyoshi 大阪支社編集局経済部
現場の強さに頼るだけでは勝ち残れない。そんなことは日本の失われた20年が証明してしまったのかも知れません。それでもやはりモノづくりの基本は現場力だと思う。ビッグデータにしろIoTにしろ、現場が自らの血肉としない限りは宝の持ち腐れとなりかねない。

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