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日清紡HDが子会社統合で強化する電子デバイス事業の行方

日清紡ホールディングス(HD)は2022年1月にグループの新日本無線とリコー電子デバイスを統合し、「日清紡マイクロデバイス」を発足させた。祖業である繊維事業を中心に拡大してきたが、時代の要請に合わせて事業ポートフォリオを大きく変化させた。現在の主力を①無線・通信②電子デバイス③自動車用ブレーキパッド―の3事業に据えて積極展開を図っている。一翼を担う日清紡マイクロデバイスの誕生は電子デバイス事業の強みを一層高める重要戦略でもある。

09年に日清紡HDとして持ち株会社に移行。「世の中のニーズに合わせて成長事業領域を拡大する戦略を採った」(田路悟日清紡マイクロデバイス社長)。新日本無線は05年に子会社化し、オペアンプなどの信号処理用アナログICを得意として発展した。さらに18年にリコーからアナログ半導体メーカーのリコー電子デバイスを買収。同社はノートパソコンやスマートフォンなどの電源ICに強みを持つ。新日本無線の製品と重複はなく補完関係にあるため、個社で事業強化を進めた。

統合に動いたのは事業環境の変化だった。18―19年の米中貿易摩擦の影響が半導体市場に影を落とし、20年に新型コロナ感染拡大が始まった。「半導体事業をさらに強化する必要が生じ、21年に合併を決めた」(田路社長)。

両社の統合により25年度に売上高1000億円、営業利益100億円を目指す。売上高で現状比3割を引き上げる。このため標準品ビジネスや信号処理ビジネスを強化する。先行き「アナログソリューションプロバイダー」へ変革させる。複合機能のICを組み合わせモジュール化を進め、近距離通信を取り入れ総合的ソリューション提供を目指す。

今後グループで無線・通信を手がける日本無線が業容拡大していけば日清紡マイクロデバイスと協業する場面が増える。「時代の要請に応じてグループ内の形態がさらに変化する可能性もある」(同)と示唆する。

日刊工業新聞2022年8月25日

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