AI処理“二刀流”で挑む、IBMが「アナログプロセッサー」製品化

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14年に発表された「トゥルーノース」の試作品。深層学習や画像認識などのAI処理を省電力で高速に実行できる

データ量の爆発的な増加や人工知能(AI)の普及に伴い、コンピューティング需要と電力需給とのバランスに赤信号が点滅している。コンピューターの頭脳を担うプロセッサー(チップ)の消費電力はうなぎ上りで、このまま放置するわけにはいかない。増え続けるAI処理に対し、デジタルとアナログの“二刀流”のプロセッサー戦略で挑むのは米IBM。同社の研究開発動向を追った。(編集委員・斉藤実)

 デジタルプロセッサーの新機軸は、オンチップAIアクセラレーター「Telum(テーラム)」。半導体シリコン上に直接AIアクセラレーターを搭載し、すべてのコアを直接つなぐ構造だ。1日に1000億回のAI推論を処理でき、カード決済や金融取引などの膨大なトランザクション処理の最中に怪しい取引や不正を即時に見つけ出せる。

一般にAIアクセラレーターと言えば、画像処理プロセッサー(GPU)を用いることが多い。だが、GPUをたくさん並べて使うと消費電力が膨大となり、省エネとは逆行する。

テーラムはAIに特化した設計により、アクセラレーターとしての新たな価値を提供する。5月にメーンフレーム(大型汎用機)「z16」に実装しており、今後はIBM独自の「パワー」プロセッサー搭載サーバーへの展開も注目される。

もう一つ、IBMがテーラムの先に見据えるのは人間の脳の働きを模したニューロンシナプス対応のアナログプロセッサーだ。

脳はニューロン(神経細胞)間の情報伝達で「スパイク(上昇)信号」を用いる。刺激を受けると、情報伝達のやりとりが一気に上昇し、一定の電位に達すると、シナプスが発芽(回路生成)する。ニューロンプロセッサーはこの原理を踏襲している。

IBMは2014年に「TrueNorth(トゥルーノース)」と呼ぶ、ニューロンシナプスプロセッサーの試作版を公開済み。当時は第3次AIブームの走りだったが、技術進化の方向性を示すにとどめた。

日本IBMの森本典繁常務執行役員は「テーラムはほんの始まり。目指すゴールはアナログプロセッサーであり、製品版の投入はそう遠くない」と明言する。

日刊工業新聞2022年9月14日

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IBM AI

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