経団連、3年連続で会員企業に賃上げを求める。ベアには慎重姿勢

春闘、事実上スタート

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左から経団連の榊原会長、安倍首相、工藤委員長
 経団連は19日、2016年春闘の経営側の指針「経営労働政策特別委員会(経労委)報告書」を公表した。デフレ脱却や経済の好循環実現に向け、業績好調な企業には昨年を上回る年収ベースの賃上げを求めた。今春闘は29日に予定されている経団連と連合のトップ会談などを経て本格化。中小企業を含めた賃金の底上げを実現できるかが焦点になる。

 経団連が会員企業に賃上げを求めるのは3年連続。昨年までポイントであったベースアップ(ベア)に関しては争点に位置づけず、「月例賃金の一律的な水準引き上げに限られず、さまざまな選択肢が考えられる」と指摘。定期昇給(定昇)やボーナスの増額、子育て世代への重点配分など、各社に総合的な検討を促す表現とした。

 また、経労委報告では問題視されている非正規労働者の待遇改善などにも言及。「意欲と能力を有し、自社の基準に達する非正規労働者の賃上げや正社員化などの取り組みを推進することも有益」として、全体の底上げを目指す姿勢も示している。

 同日会見した経営労働政策特別委員会の工藤泰三委員長は、「景気は花曇り状態であるが、昨年より業績好調な企業は多い。総額人件費を増やす方向で取り組んでほしい」と述べた。

 今春闘は25、26両日に都内で開催される労使フォーラム、29日の経団連―連合首脳会談を経て本格化。消費を活性化し、デフレ脱却を確実にするために、中小企業を含めた全体の底上げと、大企業では昨年実績を上回る賃上げ水準を確保できるかが焦点となる。

経団連会長の「言質」とった安倍首相


日刊工業新聞2015年11月27日付


 政府は26日、産業界との意見交換会「未来投資に向けた官民対話」を開き、賃上げと設備投資の今後の方針を聞き取った。経団連は2016年春闘で、収益が拡大した企業に15年を上回る賃上げ(年収)を呼びかけると表明。設備投資も、政府が早期の法人減税や規制改革など“九つの政策対応”を講じれば、18年度に81兆7000億円と15年度比で約10兆円増加できる見通しを示した。

 経団連の榊原定征会長は「名目3%成長への道筋も視野に置きながら、収益が拡大した企業に対し、今年を上回る賃金引き上げを期待」するとの方針をまとめ、会員企業に賃上げを呼びかける考えを政府に伝えた。

 大手企業は15年まで2年連続で2%台の賃上げ率、ベア(ベースアップ)を実施している。政府は名目3%成長を目標に掲げており、成長目標に見合う賃上げ率を実現できるかが16年の焦点になる。

 一方、経団連は設備投資について、条件付きで18年度に15年度見通し比で約10兆円上積みできる試算をまとめた。条件は九つの政策対応。法人実効税率の早期引き下げや規制改革のさらなる推進などを政府に要望。榊原会長は同実効税率について「来年度(16年度)に20%台を実現してほしい」と求めた。

 安倍晋三首相は経済界の表明を受け、経団連の設備投資見通しを「意欲的なもの」と評価。賃上げ方針も「今年を上回る積極的な方針が示され、高く評価する」と語った。

 問題は中国など海外景気の下振れ懸念の中、3年連続で高い賃上げ率を実現できるのか。法人実効税率も16年度に20%台まで下がるのか現時点では不透明。また規制改革も同日まとまった「一億総活躍社会」実現に向けた緊急対策では具体策に踏み込んでいない。

2016年1月20日付日刊工業新聞総合3面

COMMENT

神崎明子
デジタルメディア局
編集委員

賃上げの水準や中身に加え、中小企業や非正規社員への波及が焦点となる今年の春闘。アベノミクス効果で高収益を上げてきた大手企業の先行きについても、ここへきて暗雲が漂ってくるなか全体の「底上げ」と、昨年実績を上回る賃上げ水準確保が両立できるのかが注目点です。

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