廃棄されたスマホ・パソコン用電池、自動仕分けするAIの効果
資源リサイクル事業を手がける日本磁力選鉱(北九州市小倉北区、原田信社長)は、廃棄・回収された小型充電式電池を自動的に仕分けるシステムを6月に稼働した。人工知能(AI)による画像認識で電池の種類や用途を見分ける。スマートフォンやパソコンなど幅広く電子機器に使われ、廃棄量の増加が見込まれる小型充電式電池。仕分けの自動化により、作業者の負担軽減やリサイクル能力の向上につながる。
充電式電池にはニッケルやコバルトといった希少金属が使われ、メーカーなどにリサイクルが義務付けられている。電池の種類によって使用金属が異なるため、複数種が混ざる場合はリサイクルのために仕分けが必要。従来、人が視認し手作業で仕分けていた。
今回のシステムは北九州市立大学の研究チームと共同開発し、同大学は技術調査などを担当した。開発においては、福岡県リサイクル総合研究事業化センターの支援を得た。さらに設備導入の面では「福岡県リサイクル施設整備費補助金」を受けている。
日本磁力選鉱は開発したシステムを、ひびき工場(北九州市若松区)に設置した。廃電池の仕分けと熱分解処理を手がけてきたが、仕分けに関してはすべて手作業だった。
システムはコンベヤー、AI画像認識装置、設定したドラム缶に投入するための選別パドルなどで構成する。電池はコンベヤーで運ばれ、認識装置のカメラが電池を前、上、横の3方向から撮影して識別する。作業員がコンベヤーに電池を一つずつ置くだけで、種類を仕分けて各ドラム缶に投入されていく。
AIには「電池の種類を記載した固有のラベル」と「電池の形状と用途」を学習させた。仕分けの実証では5種類、12用途で識別して、識別時間は種類で0・26秒、用途で0・10秒だった。
システムは識別と仕分けだけでなく記録作業も効率化した。装置は識別と同時に電池の重量も測定して記録する。仕分けた種類と重量はデータ化しており、その工程の自動化にもつなげられた。「記録の自動化も作業者の負担軽減にとって大きい」(日本磁力選鉱)もので、作業者の習熟期間を大幅に短縮できる効果も生まれた。
今後、日本磁力選鉱は東芝テックと共同で他事業者へのシステム提案を進める予定だ。廃電池や小型家電のリサイクルを手がける業者への普及を目指す。またシステムは電池以外にも活用できる可能性があると見込んでいる。(西部・関広樹)