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大和証券が「健康コスト」を試算する理由

東大と協力、数年間にわたって経営に与える影響を可視化
 大和証券グループは東京大学と協力し、社員の健康が業務や経営に与える影響を定量的に計る研究を始めた。社員が健康を損なうと、仕事の能率が下がるほか、医療費が増え健康保険組合の運営を圧迫するなどのデメリットがある。同社は社員へのアンケートをもとに、健康に関連する総コストを東大と試算。今後数年間にわたって調査を継続し、健康が業務や経営に与える影響を可視化する。

 2015年に健康保険組合を通じ、組合員約1万3000人にアンケートを配布。そのうち4割から回答を得た。調査では「一番健康な状態の自分を100として、現在はどのくらいか」という自己分析を投げかける。

 個人情報を隠した上で、データを東大に提供。現在の健康関連総コストを割り出した上で、今後数年にわたって継続的に調査を行い、健康が業務や経営に与える影響を算出する。

 同社は社員の健康増進に熱心に取り組んでおり、経済産業省と東京証券取引所が選ぶ「健康経営銘柄」にも2年連続で選ばれている。15年からは、「ウオーキング」や「節食」など健康増進への取り組みを、55歳以降の給与に反映する仕組みも導入した。そのほか健康を統括する役職、CHO(チーフ・ヘルス・オフィサー)を新設するなど独自の取り組みを進めている。

 日本企業では労働効率より労働時間を重視する文化が根深く残っており、長時間労働で健康を損なう社員も少なくない。健康が業務や経営に与える影響が定性的に証明できれば、今の労働文化を一変させる可能性がある。

東証などが選んだ「健康経営銘柄」25社の中に名前も


 経済産業省と東京証券取引所は21日、第2回健康経営銘柄として25社を選定、発表した。同銘柄は東証に上場する企業の中から、従業員の健康増進に経営課題として取り組む企業を評価する制度。住友林業やワコールホールディングスなど初選定企業が11社、アサヒグループホールディングスやTOTO、大和証券グループ本社など14社が第1回に続き2年連続で選定された。

 TOTOの平野氏貞上席執行役員は「健康なくして企業活動そのものもない。ここ4、5年の活動で、やれば効果が出ると分かってきた」と手応えを実感。大和証券グループ本社の望月篤執行役員は「足かけ7年程の取り組みが評価されたのが昨年。今回はCHO(最高健康責任者)や健康経営推進会議設置など、取り組みのステージを上げている」と自信を深めていた。

 第2回健康経営銘柄に選定された企業は次の通り。▽住友林業▽ネクスト▽アサヒグループホールディングス▽ローソン▽ワコールホールディングス▽花王▽塩野義製薬▽テルモ▽コニカミノルタ▽東燃ゼネラル石油▽ブリヂストン▽TOTO▽神戸製鋼所リンナイ川崎重工業IHI▽トッパン・フォームズ▽伊藤忠商事リコーリース▽大和証券グループ本社▽東京海上ホールディングス▽フジ住宅▽東京急行電鉄▽日本航空▽SCSK
日刊工業新聞2016年1月22日金融/2面
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役デジタルメディア事業担当
健康経営で曖昧な部分も多いし、試みとしては面白いが。定年退職の平均寿命とかも入れないのだろうか。

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