渦中の東芝医療機器会社のトップに直撃「買収金額だけで決まらない」

東芝メディカルシステムズ・瀧口登志夫社長に聞く「(我々の)体制を価値として理解してもらうことが一番」

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瀧口社長
 東芝メディカルシステムズ(栃木県大田原市)の瀧口登志夫社長は日刊工業新聞社のインタビューに応じ、同社の買収先について「事業体制をしっかり評価してくれる企業が望ましい」と語った。親会社の東芝は財務改善のため東芝メディカルの売却手続きに着手。世界有数の画像診断機器メーカーをどこが傘下にするか、産業界や医療業界から大きな注目を集めている。瀧口社長に現況や今後の方針を聞いた。

 ―複数社が買収に名乗りを上げるとみられていますが、相手に何を求めていますか。
 「医療機器メーカーは技術やサービスを通じて医療をサポートする。新たな臨床価値を提供し、医療の質や効率、経済性を高めることに貢献する。これを地道にやってきたことが当社の強みであり、世界シェア上位のコンピューター断層撮影装置(CT)はその成功例だ。現場のニーズに合わせて技術やサービスを提供できる体制がなければ事業は成長しない。この体制を価値として理解してもらうことが一番であり、買収金額だけで相手が決まるものではない」

 ―現在、医療現場に混乱を招くような事態になっていませんか。
 「ユーザーの不安の声も確かにあるが、それ以上に激励の声が多く届いている。グローバルでユーザーと信頼関係を築いてきた結果だ。買収先がどこになるのであれ、ユーザーとの関係はしっかりと維持していく。医療機器の安定供給も含め、事業体制は大きく変化しない。もちろん、親会社の変更で運営のポリシーなどは変わることもあるだろうが、医療機器メーカーとして維持していかなければならないものは多い」

 ―今後の事業成長に必要な取り組みは。
 「CTはやはり被ばく低減が大きなテーマになる。磁気共鳴断層撮影装置(MRI)や超音波画像診断装置も例えば造影剤を使わないで撮影できる機能など、患者の負担軽減につながる低侵襲技術の開発に引き続き力を入れていく。ランニングコストの低減や省スペース化など、経済性の高い機器に対するニーズも世界で広がっている。それに対応した当社のMRIは人気を博し、予想以上に売れている。医療費抑制の大きな流れの中で必ず求められる技術だ」

 ―医療機器は中長期で成長が見込める有望分野ですが、市場環境をどうみていますか。
 「国内は消費増税の影響もあり、市場は大きく伸びていない。海外市場はまだら模様だ。欧州は回復の兆しがあるが、新興国は通貨の問題もある。16年度も状況は大きくは変わらないだろう。中国、ブラジル、マレーシアでCTやMRI、超音波画像診断装置など各種機器を生産し、中国やブラジルでは研究開発や現地部品調達にも取り組んでいる。グローバル市場で競争力を高めるために、安くていい部品を世界で調達し、最適地生産を進めていく」

【記者の目・医療技術資産の活用カギ】
 東芝メディカルシステムズの買収金額は数千億円規模になるとみられるが、同社には株式の額面だけでは評価できない目に見えない資産も多い。その一つが世界の医療機関とのネットワーク。日本発の医療技術を世界展開できる体制は大きな財産だ。これを有効活用できる企業でなければ、同社の買収は「宝の持ち腐れ」になる。
(聞き手=宮川康祐)

日刊工業新聞2016年1月21日 ヘルスケア

COMMENT

明豊
執行役員デジタルメディア局長 DX担当

東芝としてはキャッシュは欲しいだろうが、当たり前だが買収金額「だけ」ではない。ここからも売却先が日本の事業会社だろうということが見えてくる。

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