博士人材に必要な「トランスファラブルスキル」って何?
リバネス(東京都新宿区、高橋修一郎社長)は博士学生が自身の能力を、社会へ広く転用・活用する「トランスファラブルスキル」の実践プログラムを拡大する。社員約70人の半分以上が博士人材の同社が、異分野融合のプロジェクトのため手がけてきた社内研修をベースにした。2年目の2022年度は子ども向け研究体験教室を盛り込み、北海道大学、山梨大学、東京都立大学、東京都市大学、東京農業大学など10校以上で行う。

プログラムではまず、文章で研究をわかりやすく伝えたり、キャリアの原点を深掘りしたりするワークショップを実施。次いで専門の異なる学生同士のチームで中高生向け体験教室を企画立案し、開催する。
これにより学生は個々の相手に合わせたコミュニケーションで、何をしているかではなく「何をしたいか」を提示し、異分野の知を融合する関係性の構築を体感する。21年度は4大学約50人で実施。学生からは「自分の研究を多様な言い回しで説明できるようになった」、教員からは「教育活動の企画の質が予想以上に高い」「相手の立場に立ったプレゼンが可能になった」などの声が寄せられた。
リバネスは20年前に出前実験教室で創業した。社員の多くが大学院卒で、産学・地域連携など年約200プロジェクトを動かす。今回は同社の人材育成ノウハウを活用し、リーダーシップや起業家精神などのビジネス研修とは異なるのが特徴だ。
博士人材が一般企業やベンチャー(VB)などで広く活躍するには、専門の能力や知識を社会で転用できる状態に変える必要がある。文部科学省の博士学生支援事業でも、トランスファラブルスキルが挙げられている。
日刊工業新聞2022年8月17日
