百貨店消費は上向くか。高島屋、大丸松坂屋のトップが描く楽観論

昨年は全国百貨店売上高が4年ぶりにマイナスだったが・・

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大丸松坂屋の好本社長(左)と高島屋の木本社長
**高島屋 木本茂社長「地方・郊外店の業績に改善の兆し」
 ―消費動向をどのように見ていますか。
 「悲観的には見ていない。中間層の消費や地方・郊外店の業績にも改善の兆しが出ている。ただ実質賃金の伸びは低く、消費マインドは回復していない。2017年の再増税に向けた駆け込み需要も考えられ、ゆったりと伸びるのではないか」

 ―消費喚起に向けた取り組みは。
 「地域のマーケット力を上げるため、店舗付のバイヤーを増やした。15年10月に東京・日本橋で開業した時計専門店『ウオッチメゾン』では想定よりも高い商品が売れている。いろいろな分野でマーケットを提案する」

 ―食料品、化粧品などに特化した小型店の展開も進めています。
 「本業の補完としてとらえているが、道半ばだ。セーレンや貝印との提携事業も含め、収益モデル化に向けた種まきの状況だ」

 ―シンガポール、中国・上海に続き、16年夏にベトナム、17年にタイで開業予定です。
 「将来に向けた成長投資として準備している。この2拠点以外にも増やす予定だ。上海高島屋もトップラインは上がっており、早い段階で黒字化したい」

 ―EC(電子商取引)事業への取り組みは。
 「16年2月期は前期比2割増の120億円の売り上げ目標を掲げ、ほぼその通りに動いている。6億円を掛け、店舗とオンラインの情報一元化と、ユーザビリティ向上に取り組んだ。15年11月に設けた外商顧客専用サイトには約4000人が登録し、出足は好調だ。8月までにはEC決済に対応し、オムニチャネル事業のカウント対象になる予定だ」

 ―東急プラザ銀座など、銀座に商業施設が相次ぎ開業します。
 「ライバルになるとは考えていない。(三井不動産の商業施設)『コレド室町』開業がきっかけで日本橋のにぎわいが増したように、銀座や日本橋の街全体の回遊性、界隈(かいわい)性の向上につながると見ている」

 ―エイチ・ツー・オー(H2O)リテイリングとの業務提携の進捗は。
 「商品の共同開発に取り組み、原価低減などで成果が上がってきた。現場任せではなく、役員同士が半年に一度顔を合わせ、精力的に商品のプロセス管理などをしている」

【記者の目・きめ細かい提案がカギ】
 百貨店の業績は好調だが「訪日外国人頼み」の面は否めない。国内の中間層を取り込むためには、地域ニーズや嗜好(しこう)の変化をつかみ、「ここでしか買えない商品」「ここでしかできない体験」のきめ細かい提案がカギを握る。
(聞き手=江上佑美子)

大丸松坂屋百貨店 好本達也社長「外国人向け、まだ伸びる」


 ―消費動向をどのように見ていますか。
 「インバウンド(訪日外国人)と富裕層が押し上げている。中価格帯のファッション商品は苦戦しており、的確な出口戦略は打てない状況だ。所得の二極化が消費の二極化につながっている」

 ―インバウンドによる売り上げ見通しは。
 「欧米には外国人売上高が半分以上を占める百貨店がある。当社の免税売上高シェアは5・5%なので、伸びる余地はある。今は大丸心斎橋店などで外国人向けの売り場を設ける方法をとっているが、どの国の人が来ても心地いい空間を作るべきだと思う。中国語を話せるスタッフが商品知識を持っているとは限らない。翻訳に人工知能(AI)やモノのインターネット(IoT)を使いながら、日本流のおもてなしができるかが勝負になるのではないか」

 ―外商顧客開拓にも力を入れています。
 「首都圏にはまだ新しい顧客が無尽蔵にいるし、名古屋や大阪にも若年層の経営者や医者は多い。顧客の新陳代謝を進める上でも、第一の優先課題だ。顧客の家に上がりタンスの中まで把握するビジネスモデルから、タブレットを持ち歩き情報提供する形に変化している」

 ―地方・郊外店の状況についてはどのように考えていますか。
 「地方では少子高齢化が進んでおり、インバウンドも少ない。コストを削減し、カード顧客の数を増やしたい。都心回帰が進む中、郊外店はさらに深刻だ。構造転換の機会をつくらないといけない」

 ―アウトレット業態へ進出しました。
 「他社は小型店に力を入れているが、当社は同じ(J・フロントリテイリング)グループ内にパルコや(雑貨店)PLAZAがある。アウトレット店を増やすつもりはないが、在庫を持たないための自社商品の出口戦略として存在意義はある」

 ―2017年に銀座で商業施設を再開業する予定です。周辺では開発が進んでいますが、競争激化の懸念は。
 「東京五輪に向け、『世界の銀座』を訪れるお客さまはさらに増える。魅力的な集客装置が増えれば、それぞれにお客さまが来るようになる。その中で我々はインパクトを出せると思う」

【記者の目/中価格帯製品提案で生き残り】
インバウンドの急増に目が向きがちだが、好本社長は「売り上げの90%以上は日本人。そっぽを向かれたら困る」と強調する。引き続き富裕層の取り込みに力を入れるとともに、良質な商品の目利きや自社商品開発で魅力ある中価格帯商品を提案することが、生き残りにつながる。
(聞き手=江上佑美子)

免税売上高は同2・6倍も主力の衣料品が不振


 日本百貨店協会が18日に発表した2015年の全国百貨店売上高(全店ベース)は前年比0・6%減の6兆1742億円だった。既存店売上高は同0・2%減と、4年ぶりのマイナスだった。訪日外国人による免税売上高は同2・6倍の1943億円と高い伸びで、化粧品などの雑貨の売上高は同7・6%増と好調だったが、主力の衣料品が同3・4%減と落ち込んだ。

 井出陽一郎専務理事は免税売上高の推移について「安定成長になっている。”爆買い“ではなく、良質な商品が売れる傾向になってきた」と分析した。

 15年12月の全国百貨店売上高は7098億円で、既存店売上高は前年同月比0・1%増と2カ月ぶりのプラス。免税売上高が同38・2%増の177億円と伸び、クリスマス商材やおせちの売り上げが好調だったことも寄与した。

 一方、西日本を中心に降水量が多く、暖冬がコートやロングブーツなどの防寒衣料の売れ行きに響いた。井出専務理事は足元の売り上げについて「初売り、クリアランスセールなどが順調に推移しており、ほぼ前年並みに推移している。春物商材や付加価値商品に力を入れたい」と述べた。

日刊工業新聞2016年1月19日4面/生活面

COMMENT

村上毅
編集局ニュースセンター
デスク

中国など訪日外国人による”爆買い”に沸いた百貨店業界。そんな追い風があったにもかかわらず、15年暦年は前年割れだった。ここ5年は下げ止まったようにもみえるが、10年前と比べると2割以上業態としての売り上げが減っている。首都圏と地方の二極化や、低迷する衣料品など、根本的な課題は解消されていないのではないか。

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