味覚強化へ“食事VR”が生まれる!?東大が電気刺激で唾液分泌1.5倍に成功
東京大学の青山一真特任講師と中村裕美特任准教授、雨宮智浩准教授らは、経皮電気刺激で唾液分泌量を1・5倍に増やすことに成功した。耳前と顎に電極を配置して複数の唾液腺を刺激する。電気刺激は仮想現実(VR)に利用され、味を強めることができる。唾液と味を効果的に変調させると食べる量は少なくても食事の満足感を向上させるといった利用が開ける。
顔に2枚のゲル電極を貼って電気を流す。人体の頭部モデルを利用して電流の流れ方をシミュレーションして電極の配置を求めた。耳前から顎へと電圧をかけて唾液を分泌する耳下腺と顎下腺、舌下腺、神経を刺激する。
従来は口腔乾燥症の症状緩和のために両耳の前あたりに電極を貼る方式が提案されていた。この方式では耳下腺への刺激が中心になる。新しい配置では電流密度が顎下腺は1・8倍、舌下腺は5倍に向上し、神経への電流は抑えた。
14人で実験すると60秒の刺激で唾液分泌量が1・5倍になった。従来法は1・1―1・2倍に留まった。分泌量が増えた原因は唾液腺への刺激のほか、電気味を感じて唾液がでた可能性もある。
食事VRでは食材を大きく見せたり、風味を変えたりすることで摂取量や塩分を控えて満足度を向上させる研究が進む。唾液は分泌量を適切に調整すると味を強める効果がある。食材の咀嚼感や嚥下感の最適化につながる。また生唾を飲み込む行為がVR体験での情動を喚起する可能性がある。
日刊工業新聞2022年8月2日