浮世絵愛した清蔵の“幻のコレクション”収蔵、太田記念美術館の魅力

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葛飾北斎「冨嶽三十六景 神奈川沖浪裏」(太田記念美術館蔵)

江戸から明治にかけて大衆メディアとして普及した浮世絵。当時の日本人が憧れた美人や武将、役者などが描かれ、最先端の風俗や流行がちりばめられた浮世絵を庶民はこぞって買い求めた。この世は「憂き世」で辛いことばかり。ならば浮き浮きと楽しく暮らしたいと「浮き世」と表すようになったといわれる。

そんな浮世絵をこよなく愛したのが、東邦生命保険の社長を務めた5代目当主・太田清蔵だ。画家を志すも父の反対に遭い、その思いを浮世絵の収集に向けたという。20代で欧米を外遊し、そこで浮世絵が高く評価され、西洋絵画に多大な影響を与えたことを知り、さらに収集へ力を注いだ。

浮世絵の歴史がたどれる幅広いコレクションが魅力

清蔵は大量の浮世絵が欧米に流出するのを憂い、大正期から半世紀以上にわたって約1万2000点もの浮世絵を集めた。個人の収集品としては比類ない規模だが、その全容は当時、家族にさえ明かされない“幻のコレクション”だった。1977年の清蔵の没後、遺族がこの収集品を基にして、80年に浮世絵専門の美術館「太田記念美術館」を開館した。

同館の魅力は、浮世絵の始まりから終焉(しゅうえん)までの歴史がたどれる幅広い作品群。肉筆画と版画それぞれに名品がある。開館後、明治以降の作品を中心に所蔵品を増やし約1万5000点を数える。特にテーマ展に力を入れ、7月30日から「浮世絵動物園」を開催する。上席学芸員の渡邉晃氏は「普段、浮世絵に親しみのない層にも訴えかけ、すそ野を広げていけたら」と話す。

業界初の試みとして、インターネット上の投稿基盤「note」を使ったオンライン展を2021年に始めた。有料だが図版や解説までじっくり楽しめると愛好者を集める。開催中の展覧会だけでなく、過去の企画展の再展示も充実させる計画だ。短文投稿サイト「ツイッター」は、国内の美術館でも指折りの17万人のフォロワーを持つ。

【メモ】▽開館時間=(通常)10時30分―17時30分▽休館日=月曜日など▽入館料=展覧会により異なる▽最寄り駅=東京メトロ千代田線「明治神宮前駅」など▽住所=東京都渋谷区神宮前1の10の10▽電話番号=050・5541・8600

日刊工業新聞2022年7月29日

COMMENT

藤木信穂
編集局第二産業部
記者

浮世絵には「肉筆画」と「木版画」がある。絵師が描いた肉筆画は高価だが、彫師が版木を彫り、摺師がそこに色をのせて刷り上げる木版画の技術により、安価で質の高い浮世絵の大量生産が可能になった。当時の浮世絵は“美術品”ではなく、流行を知るファッション誌や観光地を紹介する旅行雑誌、広告としての役割を担っていた。浮世絵は江戸時代の庶民の生活やその様子を視覚的に知ることができる、現代に伝わる貴重な資料でもあるのだ。

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