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パナソニックは“スタジアムを楽しむ"サービスを提供できるか

大型ディスプレー機器だけでなく、今後はデータ分析などのソフトにも参入狙う
パナソニックは“スタジアムを楽しむ"サービスを提供できるか

フィラデルフィア市のスタジアムはパナソニックのシステムを導入し改修

 パナソニックは北米を中心にスタジアムなどのエンターテインメントサービス産業向けのシステムを展開する。2016年にブラジル・リオデジャネイロで開催のオリンピックでも「公式開閉会式パートナー」として、映像・音響(AV)機器やシステムを提供する。BツーB(企業間)ソリューション事業を担当する社内分社であるAVCネットワークス社の榎戸康二社長は20年の東京オリンピックも視野に入れ、「スタジアムソリューションはパナソニックという存在感を出したい」と意気込む。

 エンターテインメントサービス産業の最大市場である米国では、野球、アメリカンフットボールなどのスポーツビジネスがプロや大学で盛んだ。各チームが競うようにスタジアムに投資し、新規なら1000億円以上、改修でも数百億円規模の巨額投資が行われる。

売上高1000億円へM&Aも


 パナソニックはこれらスタジアムにカメラ、大型発光ダイオード(LED)ディスプレーなどの映像機器システムを相次ぎ納入。スタジアム向けシステムや太陽光発電設備の設計・施工を手がける米子会社、パナソニックエンタープライズソリューションカンパニー(PESCO)の売上高は現在の数百億円から、18年度には1000億円超と大幅に成長する見通しだ。

 14年にスタジアムを改修してパナソニックのシステムを導入したフィラデルフィア市のスタジアム「リンカーンフィナンシャルフィールド」。同スタジアムのエンジニアは「近距離でも視認できる大型ディスプレーの画質や、5年後の再改修を視野に入れた長期の関係を確認できた」と決定の理由を明かす。

 幅190フィートのメーンパネルなど複数の大型LEDディスプレー、薄型ディスプレー約1200台、放送用カメラなどを含む総額数十億円の案件で米国の競合に競り勝った。

 ジム・ドイルPESCO社長は「設計から施工、運用までの幅広いバリューチェーンをつくり、同じことができる競合を生まない」との戦略を持つ。今後、売店用の決済システムなどと組み合わせて施設の収益や集客の向上につなげ、他社が追随できないビジネスモデルを構築する考えだ。

 課題となるのは急成長を支える体制の構築。バリューチェーンの穴となっているコンテンツ管理やデータ分析に関するソフトウエア分野では、M&A(合併・買収)でこれを埋める方針だ。顧客層の開拓では、屋内ディスプレー市場などへの横展開も進めている。
(文=ニューヨーク・錦織承平)
日刊工業新聞2016年1月15日 電機・電子部品面
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役デジタルメディア事業担当
建築の専門家ではないが、個人的にスポーツスタジアムの構造や空間を見るのが趣味である。主にサッカーが多いのだが。野球でも新旧のヤンキーススタジアムは直接足を運んだ。一番気になるのは観客席の傾斜とグラウンドとの距離。観客の歓声、応援が外に抜けないでちゃんと響くか。密閉感のあるスタジアムが好み(ドルトムントのベストファーレンなど)だが、逆に前の国立競技場の開放的な感じも好きだった。 機器はいかにスタジアムや観客に溶け込むかが大事。多くの社会人スポーツチームを抱えるパナソニックは、そういった選手などの声も生かしてほしい。

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