メガバンク、株安逆手にアジア戦略加速

海外業務の潮目が変わる年になるか

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 日本国内の貸出業務で利ざやの縮小が続く中、3メガバンクのアジアへの攻勢が強まりそうだ。三菱東京UFJ銀行は14日、フィリピンの大手銀行のセキュリティバンクに出資すると発表した。約920億円を投じて、株式の約20%を握り、持ち分法適用会社にする。東南アジア諸国は中長期の潜在成長力は高いものの、中国経済の減速の影響で景気が後退し、株安局面にある。財務余力のある日本の金融機関が投資を手がけやすい環境は整う。

 三菱東京UFJ銀はセキュリティバンクの第三者割当増資を引き受ける。現地資本に次ぐ2位株主になり、取締役2人も派遣する。アジアへの投資では2013年のタイのアユタヤ銀行買収に次ぐ規模になる。

 セキュリティバンクは時価総額でフィリピン5位、同国に約262店を展開する。法人向け融資や個人向け預金、送金業務に強みを持つ。

 邦銀は、1990年代末のアジア通貨危機以降、海外事業を控えていたが、08年秋のリーマン・ショック以降、債務問題に苦しむ欧米銀行の事業縮小と対照的に海外展開を加速。三菱東京UFJ銀を傘下に置く三菱UFJフィナンシャル・グループは08年に米モルガン・スタンレーに出資したほか、13年には5000億円以上を投じて、タイのアユタヤ銀を買収した。

 海外融資残高の融資全体残高に占める割合は約4割に達する。連結の業務粗利益に占める海外比率は15年3月期に09年3月期比2倍超の45%に高まっている。

注目はフィリピン


 東南アジアは環太平洋経済連携協定(TPP)の発効を控え、日本の金融機関にとって重要度は増す。中でも、フィリピンは14年に銀行の外資規制を一部撤廃。海外企業の出資が積極化する機運が高まる。

 3メガグループの中でも三井住友フィナンシャルグループが「アジアセントリック」を掲げ、アジア重視の戦略を打ち出してきた。今後、みずほフィナンシャルグループとともに同国にどのように楔を打ち込むのか注目される。

 M&A向け資金供給や法人向け融資の拡大をエンジンにしてきた邦銀にとって「海外業務の潮目が変わる年になるのでは」(メガバンク)との指摘もある。

 日本の銀行は手持ち資金は豊富なものの、米利上げの金利上昇もあり、海外向けドル調達は従来より難しくなっている。昨夏以降の中国減速に伴う経済の軟調も影を落とす。
(文=栗下直也)

日刊工業新聞2016年1月15日金融面

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明豊
執行役員 DX担当
デジタルメディア局長

融資から投資に海外戦略を修正し、安定した外貨調達先の確保を狙う動きはまだ続くだろう。

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