東芝メディカルの買収?「条件を見て」(キヤノンCEO)

御手洗氏に聞く。「買収時ののれん代が一時的に生じるが、利益体質は盤石」

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御手洗冨士夫会長兼社長兼CEO
 ―2020年までの5カ年計画の経営目標を、売上高5兆円以上、営業利益率15%以上に設定しました。
 「10年に実現できなかった目標に再び挑戦する。これまでの5年で成長の土台は完成した。これからの5年は拡大の年だ。年率5―6%の売り上げ成長ができれば達成は不可能ではない。新規事業を伸ばしBツーB(企業間)の領域を増やすなど、企業体質を転換する。事務機とカメラは成熟産業だが、イノベーションを起こして成長させる。不安要素は中国や新興国経済の不調がいつまで続くかだ」

 ―注力分野は。
 「まずは商業印刷。包装用の箱といったパッケージ印刷を強化する。また壁紙などの用途向けに素材感を再現した立体的な印刷の分野では、素材や関連装置などの周辺企業をグループ内に取り込みたい。もう一つは監視カメラ。人やモノ、研究開発など、全面的に投資する。15年に買収したアクシスコミュニケーションズ(スウェーデン)やマイルストーンシステムズ(デンマーク)と協力して、確固たるシェアを取りたい。10年くらいかかると見ているが、ライフサイエンスも成長領域だ」

 ―利益向上の方策は。
 「この5年の最大のテーマは、現状約49%の原価率を45%まで下げることだ。カメラで行っている生産自動化を、事務機など他の部門にも横展開する」

 ―医療機器の強化に向け、東芝メディカルシステムズ(栃木県大田原市)を買収する考えは。
 「具体的に何かをする段階ではない。条件を見てみなければ分からない」

 ―東芝とは次世代半導体露光技術である「ナノインプリント」の分野でも協業しています。
 「順調に進んでいる。試作機はすでに納めているし、16年中には相手のニーズに見合った量産機も出荷できるだろう」

 ―日米欧に本社機能を置く、世界三極体制の構想は。
 「ある程度の規模の買収は地域販売会社に任せるなど、権限の委譲は進めている。20年に向けて、それぞれの地域でホールディングカンパニー(持ち株会社)を作り、その下に地域が統括する企業をぶら下げる構想を検討していく」

【記者の目・高収益の新規事業不可欠】
 注目は次の買収先に加え、利益をどう高めるか。御手洗会長は「買収時ののれん代が一時的に生じるが、利益体質は盤石」と自信をみせる。ただ14年12月期に9・8%の営業利益率を5年後に15%以上とするには、相当の飛躍が必要だ。生産システムの革新に加え、新規事業でカメラのように高い利益をたたき出すことが不可欠だ。
(聞き手=政年佐貴恵)

ネットワークカメラは今期に売上高1000億円へ


 キヤノンは生産の自動化を加速する。2016年12月期の設備投資額2000億円前後のうち、自動化システム向けの投資配分を増やす。大分キヤノン(大分県国東市)に建設中の生産技術の研究開発拠点や、事務機のマザー工場と位置づける取手事業所(茨城県取手市)、自動化設備などが投資の主な対象となる。キヤノンの動きは、政府が促す国内投資の活性化の後押しとなりそうだ。

 御手洗冨士夫会長兼社長兼最高経営責任者が13日、日刊工業新聞の取材に応じ「カメラで培った自動化技術を横展開する」との方針を示した。キヤノンは現状4割程度の国内生産比率を、2―3年後に6割に引き上げる目標を掲げる。16年は事務機の生産自動化を本格化し、取手事業所に開発・生産技術・設計・製造技術などを集約する。

 また16年12月期は、成長分野であるネットワークカメラ事業の売上高が1000億円に届く見込み。20年にかけて生産拠点の長崎キヤノン(長崎県波佐見町)で製造技術や生産能力を高め、15年に買収した世界最大手のアクシスコミュニケーションズ(スウェーデン)のカメラ生産を請け負う方針だ。

日刊工業新聞2016年1月14日/15日

COMMENT

明豊
執行役員 DX担当
デジタルメディア局長

キヤノンと東芝は半導体事業でのつながりやかつて次世代ディスプレイの共同開発に取り組むなど縁は深い。現段階で自社の医療機器の注力分野と東芝メディカルの製品ポートフォリオはずれがあるものの、買収は収益性以外の様々な要素、思惑も絡んでくる。

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