“誤解”で反対も、東京都の「太陽光パネル設置義務化」で巻き起こる賛否両論

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条例改正で、太陽光パネル設置の義務を負うのは住宅メーカー

東京都は環境確保条例を改正し、都内すべての新築建物に原則として太陽光パネルの設置を義務付ける方針だ。都は改正案のパブリックコメント(意見公募)を6月24日まで実施したが、期間中に賛否両論が巻き起こった。中には正しい情報が伝わらず、誤解と思われる反対意見もある。改正案は住宅メーカーの事業計画を左右するため、正確な情報に基づいた議論が望まれる。

“購入者が負担” など誤解による反対も

24日午後、気候変動対策を呼びかける若者の団体「メディアイズホープ」や建築の専門家、報道機関の有志が集まり、環境確保条例改正案についての意見交換会が開かれた。太陽光パネル設置への反対意見に対し「根拠なく太陽光発電を排除したい人がいる」「批判は少数だが、ネット上で情報が増えている」といった感想が出た。

省エネ住宅を推進する日本エネルギーパス協会の今泉太爾代表理事は「丁寧な議論が必要であり、我々も細かい話までしてこなかった。ファクト(事実)を並べていくことが必要」など、専門家からも反省の声が聞かれた。

実際、誤解に基づく反対意見が見られた。多い誤解が、住宅の購入者すべてに設置を義務付けるというもの。改正案によると義務を負うのは住宅メーカーだ。案では都内に住宅を供給する上位50社程度に絞る。しかも1社ずつに合計設置量(合計キロワット)を課すので、すべての住宅に搭載を求めない。日陰などで発電が期待できない建物は設置せず、ほかの物件への搭載で合計設置量を満たせば義務達成となる。

太陽光発電の費用の住宅価格への上乗せにも反発がある。都は屋根に搭載した太陽光パネルを第三者が所有する形態での義務達成も検討する。住宅購入者は費用負担がなく、設置場所を貸した賃料を得られる。住宅メーカーが太陽光パネルの所有者となった場合、発電した電気を売った収入で設置費用を回収できる。

住宅購入者が太陽光パネルを所有しても経済メリットを期待できる。都の試算によると毎月の電気代が1万円の家庭だと、出力4キロワットの太陽光パネルが発電した電気を使うと電気代を月7700円節約できる。設置費用は92万円だが、都の補助40万円を使えば6年間で初期費用を回収可能。しかも太陽光発電は燃料費高騰の影響を受けない。今後も電気料金の上昇が続くと発電した電気を自宅で使うほど経済的になる。

自然エネルギー財団(東京都港区)の西田裕子シニアマネージャーは「屋根置き太陽光発電は重要。普及に向けてアクセルを踏まないといけない」と強調する。政府は21年にまとめたエネルギー基本計画で30年までに新築一戸建て住宅の6割に太陽光パネルを搭載する目標を定めた。しかし、現状では新築住宅の設置は2割という状況だ。しかも直近では、住宅への設置数が伸び悩んでいる。

また、エネルギー消費を大幅に減らすゼロ・エネルギー・ハウス(ZEH)を標準化するように政府から求められている住宅メーカーからは「ZEH化を進めやすくなる」と義務化を歓迎する声が出ている。都の改正案は都議会での論戦に移る。正しい情報に基づいた議論を期待したい。

日刊工業新聞2022年7月1日

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