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財務大臣の実弟が宣言!九州から日本を動かす

麻生九経連会長インタビュー「16年度に実績を出せなければ問題」
財務大臣の実弟が宣言!九州から日本を動かす

麻生会長

 クルーズ船などで訪日外国人が急増し、「爆買い」が消費額を押し上げている九州。そんな追い風をしっかり捉えようと九州経済連合会は観光と農水産分野に力を入れる。麻生泰会長が目指すのは、若い世代が希望を持って地域に残り、帰れる環境づくり。2016年はそのために実績を上げる年と位置付ける。

 ―観光や農水産では特に国際関連で成果を上げています。
 「我々はモノを作れて品質管理や物流もできたが、海外に販売チャンネルを持たず売ることができなかった。そこでアジアに販売網を持つ香港の企業と手を組み、15年に出荷を始めた。品質は良く、歓迎され、取り扱い店舗を増やしたいとの話が来ている。良いスタートが切れた。あとは安定供給するだけだ」

 ―アジアを中心とする海外機関との経済協力の覚書(MOU)の締結が増えています。
 「MOUの数を増やすだけではしょうがない。要は実績。結んだ先とビジネスを始めることが重要で、成果はまだまだだと思う」

 ―九経連の課題については。
 「九経連は、九州から日本を動かすことをミッション(使命)として出している。アジアに近いとか“とんがった”取り組みがあるとか九州の可能性は大きい。16年度に数字で実績を出せなかったら問題だ。次世代に何をやっていたんだと言われる」

 「インバウンドの観光では消費額を増やすこと。2泊して爆買いして終わりではなく、九州の奥座敷に4、5泊してもらいたい。ホテルのレベルを上げるなど、そのための魅力をどう作れるか。Wi―Fi(ワイファイ)の環境整備や多言語対応を九州全体で進めていく」

 「農林水産では、環太平洋連携協定(TPP)で日本にあこがれを持つ地域の市場が広がる。彼らは日本の食べ物はおいしくて良い物だと評価している。そんなチャンスが来る。九経連は現地のパートナーを探し、販売で協力する」

 ―経営者はどう行動すべきでしょうか。
 「リーダーはビジョンを示し、明るく引っ張って行く。売り上げをいくら伸ばすなどの数値目標を時間軸を含めて設定してほしい。ぼやいたり評論したりしてばかりでは置いていかれてしまう」

【記者の目・スピードを期待】
 国内市場だけを見れば、少子高齢化による購買力の低下は避けられない。特に地方は人口減少が先行する。アジアの成長を糧とする九州での地方創生は、他地域のモデルとなって日本全体を動かす力を生み出しうる。九経連には危機感の共有と明確なビジョンで人を動かすだけでなく実績を上げるまでのスピードも期待したい。
(聞き手=関広樹)

麻生泰(あそう・ゆたか)72年(昭47)オックスフォード大卒。73年大沢商会入社、75年麻生セメント監査役、79年社長、16年会長。13年から九州経済連合会会長。福岡県出身、69歳。
日刊工業新聞2016年1月15日地域経済面
三苫能徳
三苫能徳 Mitoma Takanori 西部支社 記者
13年の会長就任当初は顔が見えにくい状況もありましたが、九州の「顔」としての活動も目立つようになりました。1月1日付で本業の麻生セメント社長を退き、会長に就いたため、今年から財界活動も積極化するのではないでしょうか。 ちなみに実兄は麻生太郎副総理兼財務相です。

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