楽天モバイル「0円廃止」で好機、MVNOは反転攻勢なるか
楽天モバイルが13日に携帯通信サービスで月額0円の料金プランの廃止を発表したことを受け、仮想移動体通信事業者(MVNO)の契約状況に変化が起きている。インターネットイニシアティブ(IIJ)は、申し込みの集中により一時商品発送が遅延。日本通信などからも「申し込みが増えている」との声があり、楽天の利用者がMVNOへ流出している可能性がある。MVNOにとって反転攻勢へのきっかけとなるのか。(張谷京子)
楽天モバイルは、移動体通信事業者(MNO)としての通信サービスにおいて、月間データ量1ギガバイト(ギガは10億)以下は0円としてきた枠組みを廃止する。通信業界に詳しいMM総研(東京都港区)の横田英明常務は、この発表に伴うMVNOへの影響について「楽天モバイルのユーザーは、価格コンシャス(意識的)な顧客が多いはず。MVNOにとっても追い風」と述べる。
MVNOは、MNOから通信回線を借りて格安な通信サービスを提供している事業者。携帯通信サービス市場におけるシェアは約1割にとどまるとされるが、今回の楽天の発表を契機にシェアを伸ばせる可能性はある。
横田常務は「個人的な見立てでは、楽天モバイルの(4月時点でのMNO)契約数500万のうち、2―3割に当たる約100万―150万規模のユーザーが他社の回線に移るのではないか」と予想。その上で「MNOのセカンドブランドへの移行も当然進むだろうが、そこだけがチョイス(選択肢)になるわけではない。しっかりアピールできればMVNOにもチャンスはある」とみている。
一方、MMDLabo(東京都港区)が運営する調査機関MMD研究所は「MVNO事業者にとって健全な成長が戻ると思う」としつつ「楽天モバイルやMNOの安価プランはMVNO料金との差がなくなっており、引き続き厳しい競争環境」とコメントする。
実際、MNOである通信大手の格安プランの申し込みは楽天の発表後、急増している。例えばKDDIのオンライン専用プラン「povo(ポヴォ)」。基本料が0円で使いたいデータ量をその都度購入する料金体系であり、14―16日の新規申し込みや他社からの乗り換えの件数は、4月16―18日比で2・5倍に増えた。
ソフトバンクは20日、オンライン専用の携帯通信ブランド「LINEMO(ラインモ)」でキャンペーンを実施すると発表。データ容量3ギガバイトを月額990円(消費税込み)で提供しているプランを、ポイント還元によって実質的に最大半年間無料とする。20―22日における他社からの乗り換え件数は、4月15―17日比で5倍になったという。
こうした中、MVNOのオプテージ(大阪市中央区)は「キャンペーンなどの施策を検討していきたい」(同社)と意気込む。MVNOは楽天の0円廃止を好機と捉え、顧客増につながる施策を打ち出せるか。MNOとの差別化がカギを握りそうだ。