【2016キーマン】新日鉄住金・進藤孝生社長「米国やメキシコは堅調だ」
中国の需給バランス改善なし。しかし早くやれば効果が出る投資は急いでやる
―年は改まりましたが、余り良い材料が見当たりません。
「今年も中国がカギになるのは間違いない。国内は2017年4月の消費増税を控えた駆け込みや東京五輪絡みの需要が出てくる。問題は海外。中国の過剰能力が早期に減ることはない。新しい臨海型製鉄所も稼働する。需給バランスの改善は期待できない」
―15年度からの3カ年中期経営計画も微修正が必要ですね。
「中計で掲げた”設備と人の両面で国内マザーミルを強化“や”海外収益拡大“などのグランドストラテジーは変わらない。ただ、個別の施策で足元の環境悪化をどう反映させるかは考えないといけない」
―3年で1兆3500億円を計画している国内投資も対象になりますか。
「額を大きく減らすつもりはない。ただ、鋼材生産量は多少減らさざるを得ないし、単価も下がっている。案件ごとに投資効果を見直し、優先順位を変えることになる。そもそも投資計画はトップヘビー(最大限)で組んでおり、1年目はかなりの意思決定を行った。例えば、早くやれば効果が出る投資は急いでやる。コストが下がる投資や省エネルギー投資、さらに老朽更新は待ったなしだ」
―増産に関する投資は控えたり、先送りしたりするわけですね。
「コストに響くものは計画通り、能力増強や新しいマーケットへの参入などでは少し抑えることになる。もちろん、増産に関する投資でも立ち上げ中の案件については、収益に早く貢献させるため、急がねばならない」
―中国以外の海外事業についてはどう見ていますか。
「米国やメキシコは堅調だ。特に米国のグループ工場では早く自動車向けの超ハイテン(高張力鋼板)をつくれるようにしないと。心配なのは資源国。特にマイナス成長のブラジルは政治・経済ともにどうなるか分からない。東南アジアも中国の影響をどこまで受けるかが懸念材料だ」
―国内では電炉再編のキープレーヤーに挙げられています。
「グループの再編が進んでいるが、何も当社が旗を振っているわけではない。電炉各社が対峙(たいじ)するマーケットを見て、個別に検討した結果だ。問題はそれによって収益が上がるかどうかで、それは自分たちで判断し、決めている」
【記者の目・国際的競争優位性に自信】
厳しい環境下でも、中計初年度の15年度を「着実に進んでいる」と言うように自己評価は決して悪くない。徹底して技術とコストにこだわり、高級鋼で差異化する中計の施策をぶれずに進めれば、国際的な競争優位性を確保できるとの自信があるためだ。海外の鉄鋼各社が軒並み赤字や低収益にあえぐ中、一定の利益をたたき出せていることも、それを裏付けている。
(聞き手=大橋修)
「今年も中国がカギになるのは間違いない。国内は2017年4月の消費増税を控えた駆け込みや東京五輪絡みの需要が出てくる。問題は海外。中国の過剰能力が早期に減ることはない。新しい臨海型製鉄所も稼働する。需給バランスの改善は期待できない」
―15年度からの3カ年中期経営計画も微修正が必要ですね。
「中計で掲げた”設備と人の両面で国内マザーミルを強化“や”海外収益拡大“などのグランドストラテジーは変わらない。ただ、個別の施策で足元の環境悪化をどう反映させるかは考えないといけない」
―3年で1兆3500億円を計画している国内投資も対象になりますか。
「額を大きく減らすつもりはない。ただ、鋼材生産量は多少減らさざるを得ないし、単価も下がっている。案件ごとに投資効果を見直し、優先順位を変えることになる。そもそも投資計画はトップヘビー(最大限)で組んでおり、1年目はかなりの意思決定を行った。例えば、早くやれば効果が出る投資は急いでやる。コストが下がる投資や省エネルギー投資、さらに老朽更新は待ったなしだ」
―増産に関する投資は控えたり、先送りしたりするわけですね。
「コストに響くものは計画通り、能力増強や新しいマーケットへの参入などでは少し抑えることになる。もちろん、増産に関する投資でも立ち上げ中の案件については、収益に早く貢献させるため、急がねばならない」
―中国以外の海外事業についてはどう見ていますか。
「米国やメキシコは堅調だ。特に米国のグループ工場では早く自動車向けの超ハイテン(高張力鋼板)をつくれるようにしないと。心配なのは資源国。特にマイナス成長のブラジルは政治・経済ともにどうなるか分からない。東南アジアも中国の影響をどこまで受けるかが懸念材料だ」
―国内では電炉再編のキープレーヤーに挙げられています。
「グループの再編が進んでいるが、何も当社が旗を振っているわけではない。電炉各社が対峙(たいじ)するマーケットを見て、個別に検討した結果だ。問題はそれによって収益が上がるかどうかで、それは自分たちで判断し、決めている」
【記者の目・国際的競争優位性に自信】
厳しい環境下でも、中計初年度の15年度を「着実に進んでいる」と言うように自己評価は決して悪くない。徹底して技術とコストにこだわり、高級鋼で差異化する中計の施策をぶれずに進めれば、国際的な競争優位性を確保できるとの自信があるためだ。海外の鉄鋼各社が軒並み赤字や低収益にあえぐ中、一定の利益をたたき出せていることも、それを裏付けている。
(聞き手=大橋修)
日刊工業新聞2016年1月4日素材面