市民を乗せた完全自動運転車が藤沢の街を走る!
ディー・エヌ・エーとZMPのロボットタクシー、いよいよ来月実証
神奈川県藤沢市の国家戦略特区で、2月にも興味深い実証実験がスタートする。ロボット技術を活用した自動運転車が市民を乗せて街を走る、世界初の試みだ。実験を実施するロボットタクシー(東京都江東区)に、運用や技術の課題、実用化の先に何を見据えるのか探る。
ロボットタクシーはディー・エヌ・エー(DeNA)とロボットベンチャーのZMP(同文京区)が共同出資して2015年5月に設立された。完全自動運転による無人タクシーの実現を目指す。
藤沢での実証実験は無人タクシー実用化への第一歩だ。昨秋、横浜スタジアム(横浜市中区)で、インターネットを介して自動運転車を呼びスーパーなどへ運んでもらうという実施概要を発表した。実験では運転席に人が乗り、安全を確保する。これで技術を磨き上げ、想定外のトラブルをつぶし込む。実証実験に手を挙げる自治体があれば、積極的に実施地域を増やしたい意向という。
気になるのは技術のハードルを越えたかどうか。自動運転車を開発するZMPの三原寛司取締役技術開発部長は「走る、曲がる、止まるという基本的な技術は確立している。技術の進化により、想定されるたいていのシチュエーションには対応できる」と話す。自動運転に必要な技術でも特に画像認識技術が近年、飛躍的に向上。実用化に足るものに引き上げられた。
だが、絶対の安全はなく「よく『完成に何%まで来ているか』と聞かれるが、100%は永遠にない」(三原取締役)と強調する。例えば、わざとぶつかってくるような時には対応できない。気象条件でも現状、雪や大雨、西日の射す場所では走行しないようにしている。
藤沢での実験も、走行コースは限定する。白線があっても道幅が狭い、混雑している場所で右折する必要がある、人の往来が多い交差点、といった場所は避ける。「タクシーの目的は指定された場所に人を送り届けること。まずは自信を持って走れるルートを選んで事故なく技術を磨き上げる」(同)という。
世界中の自動車メーカーが自動運転の実現を目指す中「全てのことができなくても、サービスが提供できれば良い」(関係者)点が、実用化のスピードを速められる秘訣(ひけつ)だ。
無人タクシー実用化のめどは20年。東京五輪開催時に、東京の臨海地区を有力候補に、海外からの観光客へ先進技術をアピールする。ただ、技術の進捗(しんちょく)を見ると、限られた場所で実施されることになりそうだ。
それでもロボットタクシーの中島社長(DeNA執行役員)は法律など諸条件が整っていれば「20年代中に、無人タクシーが普通に走る時代はやってくる」と予見する。
そうなった場合、人に加え空いている無人タクシーが個別の住宅へ荷物を配送する、といったサービスも行いたいという。現在想定にない新たなサービスも柔軟に検討していきたい考えで、宅配業者や完成車メーカーなど連携先が現れれば積極的に組んでいく姿勢でいる。
無人タクシーは高齢者の足代わりとして期待されるだけでなく、自動車事故の9割を占めるとされるヒューマンエラーを排除できる可能性がある。実証実験が周囲の期待にどこまで応えられるか、注目される。
(文=石橋弘彰)
技術のハードルは越えたか
ロボットタクシーはディー・エヌ・エー(DeNA)とロボットベンチャーのZMP(同文京区)が共同出資して2015年5月に設立された。完全自動運転による無人タクシーの実現を目指す。
藤沢での実証実験は無人タクシー実用化への第一歩だ。昨秋、横浜スタジアム(横浜市中区)で、インターネットを介して自動運転車を呼びスーパーなどへ運んでもらうという実施概要を発表した。実験では運転席に人が乗り、安全を確保する。これで技術を磨き上げ、想定外のトラブルをつぶし込む。実証実験に手を挙げる自治体があれば、積極的に実施地域を増やしたい意向という。
気になるのは技術のハードルを越えたかどうか。自動運転車を開発するZMPの三原寛司取締役技術開発部長は「走る、曲がる、止まるという基本的な技術は確立している。技術の進化により、想定されるたいていのシチュエーションには対応できる」と話す。自動運転に必要な技術でも特に画像認識技術が近年、飛躍的に向上。実用化に足るものに引き上げられた。
だが、絶対の安全はなく「よく『完成に何%まで来ているか』と聞かれるが、100%は永遠にない」(三原取締役)と強調する。例えば、わざとぶつかってくるような時には対応できない。気象条件でも現状、雪や大雨、西日の射す場所では走行しないようにしている。
まずは自信を持って走れるルートを選んで
藤沢での実験も、走行コースは限定する。白線があっても道幅が狭い、混雑している場所で右折する必要がある、人の往来が多い交差点、といった場所は避ける。「タクシーの目的は指定された場所に人を送り届けること。まずは自信を持って走れるルートを選んで事故なく技術を磨き上げる」(同)という。
世界中の自動車メーカーが自動運転の実現を目指す中「全てのことができなくても、サービスが提供できれば良い」(関係者)点が、実用化のスピードを速められる秘訣(ひけつ)だ。
無人タクシー実用化のめどは20年。東京五輪開催時に、東京の臨海地区を有力候補に、海外からの観光客へ先進技術をアピールする。ただ、技術の進捗(しんちょく)を見ると、限られた場所で実施されることになりそうだ。
2020年代に実現、荷物配送サービスも
それでもロボットタクシーの中島社長(DeNA執行役員)は法律など諸条件が整っていれば「20年代中に、無人タクシーが普通に走る時代はやってくる」と予見する。
そうなった場合、人に加え空いている無人タクシーが個別の住宅へ荷物を配送する、といったサービスも行いたいという。現在想定にない新たなサービスも柔軟に検討していきたい考えで、宅配業者や完成車メーカーなど連携先が現れれば積極的に組んでいく姿勢でいる。
無人タクシーは高齢者の足代わりとして期待されるだけでなく、自動車事故の9割を占めるとされるヒューマンエラーを排除できる可能性がある。実証実験が周囲の期待にどこまで応えられるか、注目される。
(文=石橋弘彰)
日刊工業新聞2016年1月8日 ロボット面