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ANA発スタートアップが挑む、アバターで“瞬間移動”サービスの効果

ANA発スタートアップが挑む、アバターで“瞬間移動”サービスの効果

操作者の顔を画面に映し出せるため、対面でのコミュニケーションが容易(avatarin提供)

ロボ遠隔操作の基盤構築

ANAホールディングス(HD)発のスタートアップであるavatarin(東京都中央区、深堀昂最高経営責任者〈CEO〉)は、アバター(分身)技術を活用し、バーチャルな“瞬間移動”体験ができるサービスを含めたアバタープラットフォーム(基盤)の開発を進める。新型コロナウイルスの影響で人々の移動が難しくなる中、新たな移動体験に向けた挑戦が続いている。(浅海宏規)

アバターは、人工知能(AI)や仮想現実(VR)、通信、ロボット工学といった先端技術を結集して開発。インターネット技術を活用し、遠隔地にあるロボットを操作して移動しながらコミュニケーションをとれるのが特徴だ。

深堀CEOと梶谷ケビン最高執行責任者(COO)が2016年に米XPRIZE財団主催のコンペティションに参加。アバター技術が人々の生活に変化をもたらす可能性のある点を評価され、グランプリを受賞した。

その後、アバターの事業化に向けた取り組みを進め、20年4月にavatarinを設立した。

同社はアバターロボット「newme(ニューミー)」の試作モデルを開発。20年度は美術館や博物館などに貸し出すことを念頭に、約300台を製造した。コロナ禍で人々のライフスタイルが変化する中、「病院や介護施設などからも問い合わせがあり、フル稼働の状況だった」と深堀CEOは振り返る。

ニューミーには約10インチのディスプレーが付いており、操作者の顔を画面に映し出せるため、対面でのコミュニケーションが容易だ。高さは100センチメートル、130センチメートル、150センチメートルの3段階から選べ、目的に応じて最適な位置で利用できるようにした。

21年10月には瞬間移動サービス「アバターイン」のベータ版の提供を始めた。ユーザーは遠く離れた場所にあるニューミーを操作し、その場にいるかのように瞬間移動体験ができる。

自分のタイミングで見る、話す、歩くといった体験ができるメリットを生かせば、施設は訪れたことのないユーザーへのアプローチが可能になり、新規顧客の開拓につながりそうだ。

ニューミーを操作し、見る、話す、歩くといった体験ができる(イメージ、avatarin提供)

例えば同サービスを導入した沖縄美ら海水族館(沖縄県本部町)では、ユーザーが遠隔地からニューミーを操作し、開館中であれば館内の鑑賞や解説員によるガイドを受けられるほか、閉館後は指定されたエリアをガイドなしで自由に鑑賞できるサービスを提供。これまで複数回サービスを利用した利用者もいるなど、反響は上々だったという。

深堀CEOは「より気軽に、よりエコに、より多くの人に新しい移動を提供できる」と強調。「自分で動き回れる自由さ」をアピールしながら、普及を目指していく。

日刊工業新聞2022年4月12日

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