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中国経済、製造業指数は上向かずも消費に変化

**「上位中間層」が台頭、製品開発の戦略転換必要
中国は経済減速が叫ばれながらも、消費は2016年も堅調に推移する見通しだ。消費の指標となる「社会消費品小売総額」は、2015年1―11月まで前年同月比10%以上の成長を続けている。こうした中、中国の消費市場も「上位中間層」が台頭するなど質的変化を遂げており、「より戦略的に攻めるべきだ」と専門家は指摘する。

 米ボストン・コンサルティング・グループ(BCG)によると、中国の消費市場は05年から10年ごろまで「新興中間層」と呼ばれる月収約9万―15万円の所得層がけん引してきた。だが、足元は伸びが鈍化している。

 代わって「上位中間層」と呼ばれる同約23万―41万円の所得層が台頭。20年代にはこの層が都市部の世帯数の多くを占めるようになるという。

 上位中間層の特徴は、自動車やワインなどで高級品を好み、家庭用医薬品やオーガニック食品に関心の高い健康志向の人々。この点を押さえて製品開発すべきだが、日本企業はまだ特定の領域に狙いを定めた製品開発は行えていないという。

 BCG東京オフィスの杉田浩章氏は「中国メーカーも力を付ける中、所得層を見定め、その上で”24歳の女性“など年齢や性別を絞って製品開発しないと中国消費者の心はつかめない」と指摘する。

 日本貿易振興機構(ジェトロ)の石毛博行理事長は、80年代―90年代に生まれた中国の一人っ子世代は、兄弟が複数いた世代に比べ、「生活の質を重視する傾向が強い」と分析。この世代が今や子を産み親世代になっており、「おむつや乳幼児食品が価格より品質重視になっている」と見る。

 また中国の高齢者も、かつては貯蓄を好む「節約型」だったが、50年代―70年代に生まれた世代が高齢者になる頃は「消費型」に変化しているだろうとし、「こうした変化を見逃さず、市場開拓すべきだ」(石毛理事長)と強調する。

PMI、さらに下振れするリスク


 中国の景気がなかなか重い腰を上げない。英調査会社マークイットが4日に発表した2015年12月の中国製造業景況指数(PMI)は、同11月より0・4ポイント低い48・2だった。景気判断の節目となる50を下回るのは10カ月連続。中国国家統計局が公表した同数値も5カ月連続で50を下回っている。食品など消費関連や減税措置を打った自動車は上向きつつあるが、全体が復調するには時間がかかりそうだ。

 マークイットのPMIは15年9月の47・2を底に回復の兆しもあるが、50の節目には届かない。中国国家統計局の12月のPMIは49・7と、11月より0・1ポイント上昇したものの、水面下にとどまる。同統計局は自動車や食品は「55以上」で景気の調子は良いと見ているが、原油価格下落につられて工業製品・原材料の出荷価格が下がり、製造業は業況が芳しくないと分析している。中でも規模の小さい企業ほど景況感は悪く、大企業が50・9と50の節目を超える一方、中堅企業のPMIは49・6、中小企業のPMIは44・9だった。

 マークイットがまとめるPMIは同統計局と比べて中小企業の景況感をより反映していると言われ、数字が低めに出ているとみられる。マークイットは12月のPMIが11月より下落したことを受け、「中国の景気回復は壁にぶつかり、さらに下振れするリスクに直面している」とのコメントを出している。
日刊工業新聞2016年1月5日3面
村上毅
村上毅 Murakami Tsuyoshi 編集局ニュースセンター デスク
中国の経済指標はどれもさえない。来週の貿易統計、再来週のGDPと重要な発表が控えるが、その動向よってはまた株安が進みそうだ。

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