ニュースイッチ

「子供版NISA」証券各社が口座獲得を急ぐワケ

祖父母から孫への資産移転に期待
「子供版NISA」証券各社が口座獲得を急ぐワケ

野村証券は投資イベントで「ジュニアNISA」のブースを設置

 未成年者を対象にした少額投資非課税制度「ジュニアNISA」がスタートした。年間80万円までの株式投資などに対し、配当益や売却益を無税とする制度だ。投資による進学資金形成や高齢者から若年者への資産移転、国民の金融リテラシー向上につながると期待される。ジュニアNISA口座は開設後の証券会社変更ができないこともあり、証券各社は早期の口座獲得に力を入れる。

 ジュニアNISA口座を開設できるのは、日本国内に居住する0―19歳の未成年者。非課税となるのは、上場株式や公募株式投資信託などの配当益や売却益。2016年4月から23年までの8年間買い付けが可能で、非課税期間は最長5年間となっている。

 野村証券は、15年末に都内で開催した個人向け投資イベントで「ジュニアNISA」のブースを設置した。孫への制度利用を考えているのか、高齢の参加者が多数来訪。講師の話に熱心に耳を傾けていた。大和証券も昨年末に各支店で関連セミナーを開催。制度の周知徹底に取り組んでいる。

 他社と一線を画す取り組みをしているのがSMBC日興証券だ。ジュニアNISA口座を開設した未成年者の顧客に向け、オリジナル金融カードゲーム「アセットモンスター」をプレゼント。遊びながら金融資産の種類と特徴を学習できる。

 中堅証券やネット証券も関連キャンペーンを展開する。いちよし証券の山?泰明社長は「ジュニアNISAはNISA以上に強く取り組んでいく」と意気込む。

口座開設後、証券会社の変更は不可能


 ジュニアNISAは投資による若年層の資金形成を主眼とした制度だが、課題もある。災害などの例外はあるものの、原則的に口座開設者である子や孫が18歳になるまで払い出しができない。口座開設後の証券会社変更も不可能だ。成人向けNISAも同様だが、口座内での金融商品乗り換え(スイッチング)ができないのも不便だ。

 ただ、金融資産の高齢者層への偏りが指摘される中、「祖父母から孫へ」「親から子へ」の資産移転を加速するジュニアNISAの意義は大きい。子や孫にとっても、現金をただ渡されるのではなく、株式や投資信託の形で資産を引き継げば、金融商品に対する知識も自然と深まるだろう。

 日本取引所グループ(JPX)の清田瞭グループCEO(最高経営責任者)も「ジュニアNISAが、家庭で株や投資の話をするきっかけになれば」と期待している。
(文=鳥羽田継之)
日刊工業新聞2016年1月6日金融面
神崎明子
神崎明子 Kanzaki Akiko 東京支社 編集委員
日本の金融資産の7割近くは60歳以上の高齢者が占めているという。政府は経済の活性化を図るため、税制を通じて高齢者から若年層への資産移転を促そうとしています。子供版NISAもこうした狙いで新設されました。果たして「凍ったマネー」は、どこまで動くか。

編集部のおすすめ