「航続距離」世界最長クラス…国内スタートアップが投入するEVトラックの全容
EVモーターズ・ジャパン(北九州市若松区、佐藤裕之社長)は2023年春をめどに、世界最長クラスの航続距離を実現した小型電気自動車(EV)トラック3車種を投入する。2―3年内に国内で数百台の販売を目指す。まずは実証実験を踏まえ、10―12月にも受注を始める。車体には軽量な炭素繊維強化プラスチック(CFRP)を使用。航続距離を大手トラックメーカーが手がける小型EVトラックの倍以上となる200キロ―350キロメートルまで伸ばした。脱炭素化を背景に高まる物流企業のEV需要を取り込む。(石川雅基)
EVトラック市場に国内スタートアップが参入する。EVモーターズ・ジャパンは、ラストワンマイル(目的地までの最終区間)や倉庫から地域店舗への配送での利用を想定した小型EVトラック3車種を発売する。車両総重量は約3・5トン―7トン。電池は世界最大手の中国・寧徳時代新能源科技(CATL)製や東芝製を選べる。災害時には移動電源車として活用できる。
最大の特徴は1回の充電で走行できる航続距離。鋼板の約2割の重さで5倍の強度を持つCFRPを車体に使って軽量化を図った。さらに中国の北京科技大学と共同開発したインバーター制御技術によって電池効率を高め、低い電力消費率と電池の長寿命化を実現した。航続距離は小型EVトラックとして世界最長クラスという。
補助金を除いた販売価格は、600万―1500万円程度を想定。他社のEVトラックと同程度まで抑える。
生産は委託する中国の工場で行う。23年秋には北九州に自社工場が完成する計画で国内生産も始める。同工場は年1500台程度のEVバスやトラックの生産を想定する。
同社は大手メーカーで30年以上、電池や制御システムを研究してきた佐藤社長が19年に設立。社員は約30人。
EVトラックをめぐっては、国内メーカーの開発競争が激しくなっている。17年に国内初の小型EVトラックを発売した三菱ふそうトラック・バスは、数年内にサイズや航続距離が異なる車両を投入。日野自動車は22年初夏、いすゞ自動車は22年度中に小型EVトラックの発売を目指している。
背景にあるのは物流企業の脱炭素化の流れだ。ヤマトホールディングス(HD)は10日、EVを30年までに2万台導入すると発表。佐川急便は保有する軽自動車7200台を全てEVに切り替える方針だ。