【連載】挑戦する地方ベンチャー No.7 アイパブリッシング(前編)
中小自治体でもオープンデータサービスを導入するために
金沢からオープンデータの取組みを全国へ―。アイパブリッシング(石川県金沢市)は2016年4月より、自治体の画像オープンデータプラットフォームのクラウドサービスを開始する。観光地などの画像とそれに付随する場所、撮影年月日などのデータをオープンデータとして公開。出版刊行物やウェブサイトなどに無償で使用してもらうことで自治体のPRにつなげるとともに、利用問い合わせ対応の業務を減らす狙いがある。10万人未満の自治体の場合、導入しやすいよう10万円を切るクラウドの年間利用料を予定している。オプションでSNSとの連携や、ダウンロードした人へのアンケートなども可能である。
このサービスのきっかけは、同社が金沢市から画像オープンデータサービス作成を受託したことにある。出版・メディア関係者や観光客から好評でダウンロード数が増え、他の自治体からも導入したいという声があったため、クラウドサービス化を決めた。
現在、オープンデータを導入する自治体は全体の1割程度だが、統一フォーマットが存在していない。国はフォーマットを統一するという発表はしているが、実施がいつになるかわからない。このため、オープンデータを導入しない自治体の理由で一番多いのが「基準がないから」だという。「フォーマットの共有が容易なクラウドを使えば、民間の力で統一フォーマットを作れます。例えば当社の画像オープンデータフォーマットが広まれば、自然に事実上の基準(デファクトスタンダード)になる」と、代表取締役の福島健一郎氏は話す。さらに、画像であればオープンにもしやすく、まだオープンデータをしていない自治体へも営業しやすい。
基準をつくるため、まずはさまざまな自治体の声を聞いて回り、有識者に意見を求め、仮説を立てながら実証している。今回リリースする画像オープンデータサービスも、金沢市のものが発端ではあるが、他の自治体の声を取り入れてブラッシュアップされている。今後も必要な機能は追加していく予定だ。
今後は公共交通機関の時刻表などの世界標準フォーマットになりつつあるである「GTFS」の利活用をはじめ、自治体がオープンデータを活用する際のコンサルティング業務なども行っていく。
オープンデータを推進していく意義はなにか。「まず、自治体や国は個人情報をのぞく情報をオープンにするべきと考えています。オープンデータをやらないという選択肢はもはやないのでは」と福島社長は見る。欧米ではオープンデータが使われる事例が増えており、効果も出ている。日本政府としても2013年のG8で確約したからにはやらざるを得ないだろう。
オープンデータには3つの効果がある。まず、政府のデータを開示することにより政治的透明性を量ること。さらにデータを活用することで市民の活動が活発化すること。最後に、新たなビジネスの創出が挙げられる。今までは、データを得るため莫大なコストをかける企業が多く、データを持っていることが優位性だった企業も少なくない。しかし自治体がデータを開示することでコストをかけずデータを得られる企業が増え、産業活性化につながる。
例えば欧米では土壌や気候のデータをかけあわせ、地域ごとの作物収穫量を予測。その結果をもとに不作に対応した保険を売るというビジネスが成功している。データをうまく活用し、予測にまでつなげ、新たなビジネスを生み出しているのだ。
まだ新しい概念であるオープンデータ。国内では事業として取り組み成功している例は少ないが、「成功していないからこそ挑戦したい」と福島社長は意気込む。「オープンデータ関連のサービスに取り組んでいる大企業はたくさんある。しかし大企業のサービスを契約できるのは都市部の大きな自治体だけ。当社は中小自治体のニーズをくみ取りながら、導入しやすいサービスを低価格で提供していきたい」。
このサービスのルーツは、福島氏が会社設立当時から大切にしてきた「顧客と一緒になって新しいサービスをつくり込んでいく」というポリシーにある。
(後編は1月16日に掲載)
<会社概要>
アイパブリッシング株式会社
所在地:石川県金沢市西念1-2-33
設立:2011年5月 ※2009年4月からアイパブリッシング有限責任事業組合として事業開始
事業内容:スマートフォン向けアプリケーション、コンテンツの開発
スマートフォンを利用したビジネスのコンサルテーション Webサービスの開発/運営
http://www.ipublishing.jp/>
画像オープンデータのデファクトスタンダード目指す
このサービスのきっかけは、同社が金沢市から画像オープンデータサービス作成を受託したことにある。出版・メディア関係者や観光客から好評でダウンロード数が増え、他の自治体からも導入したいという声があったため、クラウドサービス化を決めた。
現在、オープンデータを導入する自治体は全体の1割程度だが、統一フォーマットが存在していない。国はフォーマットを統一するという発表はしているが、実施がいつになるかわからない。このため、オープンデータを導入しない自治体の理由で一番多いのが「基準がないから」だという。「フォーマットの共有が容易なクラウドを使えば、民間の力で統一フォーマットを作れます。例えば当社の画像オープンデータフォーマットが広まれば、自然に事実上の基準(デファクトスタンダード)になる」と、代表取締役の福島健一郎氏は話す。さらに、画像であればオープンにもしやすく、まだオープンデータをしていない自治体へも営業しやすい。
基準をつくるため、まずはさまざまな自治体の声を聞いて回り、有識者に意見を求め、仮説を立てながら実証している。今回リリースする画像オープンデータサービスも、金沢市のものが発端ではあるが、他の自治体の声を取り入れてブラッシュアップされている。今後も必要な機能は追加していく予定だ。
今後は公共交通機関の時刻表などの世界標準フォーマットになりつつあるである「GTFS」の利活用をはじめ、自治体がオープンデータを活用する際のコンサルティング業務なども行っていく。
「成功していないからこそ挑戦したい」
オープンデータを推進していく意義はなにか。「まず、自治体や国は個人情報をのぞく情報をオープンにするべきと考えています。オープンデータをやらないという選択肢はもはやないのでは」と福島社長は見る。欧米ではオープンデータが使われる事例が増えており、効果も出ている。日本政府としても2013年のG8で確約したからにはやらざるを得ないだろう。
オープンデータには3つの効果がある。まず、政府のデータを開示することにより政治的透明性を量ること。さらにデータを活用することで市民の活動が活発化すること。最後に、新たなビジネスの創出が挙げられる。今までは、データを得るため莫大なコストをかける企業が多く、データを持っていることが優位性だった企業も少なくない。しかし自治体がデータを開示することでコストをかけずデータを得られる企業が増え、産業活性化につながる。
例えば欧米では土壌や気候のデータをかけあわせ、地域ごとの作物収穫量を予測。その結果をもとに不作に対応した保険を売るというビジネスが成功している。データをうまく活用し、予測にまでつなげ、新たなビジネスを生み出しているのだ。
まだ新しい概念であるオープンデータ。国内では事業として取り組み成功している例は少ないが、「成功していないからこそ挑戦したい」と福島社長は意気込む。「オープンデータ関連のサービスに取り組んでいる大企業はたくさんある。しかし大企業のサービスを契約できるのは都市部の大きな自治体だけ。当社は中小自治体のニーズをくみ取りながら、導入しやすいサービスを低価格で提供していきたい」。
このサービスのルーツは、福島氏が会社設立当時から大切にしてきた「顧客と一緒になって新しいサービスをつくり込んでいく」というポリシーにある。
(後編は1月16日に掲載)
アイパブリッシング株式会社
所在地:石川県金沢市西念1-2-33
設立:2011年5月 ※2009年4月からアイパブリッシング有限責任事業組合として事業開始
事業内容:スマートフォン向けアプリケーション、コンテンツの開発
スマートフォンを利用したビジネスのコンサルテーション Webサービスの開発/運営
http://www.ipublishing.jp/>
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