医師・調理師資格などの挑戦を支援する制度、タマノイ酢か運用する狙い
タマノイ酢(堺市堺区、播野勤社長)は、社員が医師や調理師資格の取得など“プロフェッショナル”を志した際、挑戦を支援する「フューチャー制度」を運用している。同社は中途採用を一切実施しておらず、頻繁にジョブローテーションを行ってオールラウンド型の人材育成を基本としている。一方で業務を遂行する中で、専門性を身につけたいと考える社員も現れる。
会社としても、付加価値の高い商品を生み出していくには専門性を身につけることが重要だ。社員の中から自社の事業に必要な職業を“内製”するため、同制度を設けた。
制度を利用する社員は会社に籍を置いたまま、資格取得や大学の編入試験、医学部の勉強に専念して取り組むことができる。すでに同社には医師として働く社員2人が存在。専門家の立場から、商品づくりに助言するほか、社員の健康相談などにも乗っている。
社員採用を新卒のみに限定している同社にとって、多様性の確保にも欠かせない人事制度が、5年間限定して働く契約社員「キャリア制社員」だ。就職氷河期にあった2004年に「若い人材の将来のために、成長できる機会を提供したい」との播野社長の思いから導入に至った。毎年採用する社員のうち約3分の1が同制度で入社。自らのキャリア設計の中で、期間を決めて企業の一員として働く経験を積み、将来の夢に向けた準備期間として活用して〝卒業〟していくのだという。
常に一定数の20代社員が存在することによって「社内に刺激が生まれる」(篠原美和子社長室課長)効果がもたらされている。人を育て育てられる経験を通じて正社員にとっても成長機会の創出につながっているようだ。
同社が目指してきたのは「社員の成長と自立を促す働き方」だ。時代が変化しても社員同士の日々の関わり合いを重視しており、コロナ禍で関係の希薄化が加速して個人指向を強めがちな他の企業とは一線を画す独自の企業文化と言える。