東洋紡、エアバッグ基布原事業の課題と可能性

米の生産能力増強。原糸売りと一貫生産をどのようにバランスさせるか

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自動車メーカーの地産地消ニーズに対応
 東洋紡は子会社を通じて米国のエアバッグ原糸生産能力を近く約2割増強する。顧客である日系自動車メーカーの安定供給の要求に応じ、地産地消に対応するのが狙い。米国で生産するエアバッグ基布の原糸を、2016年中めどに全て米国産に切り替える。タイで生産して米顧客に納入しているエアバッグ基布も、米国産原糸を使った米国産製品に切り替え、世界最適生産を推進する。

 東洋紡はエアバッグ基布米国工場(アラバマ州)に、敦賀事業所(福井県敦賀市)から原糸の一部を供給しているが、子会社の独PHPファイバーズの米国工場からの全量供給に切り替える。東洋紡の米基布工場はPHP米工場の敷地内にあり、従来から原料調達で緊密な関係を築いてきた。PHPの米工場生産能力を、現在の年1万トンから年1万2000トン程度へ増やす。

 日系自動車メーカーの米拠点向けには、日本産原糸を使った基布をタイで生産し供給している分もあるが、これも米国産原糸・米国産基布に切り替えを進める。

 東洋紡は14年、タイ・インドラマと共同でエアバッグ原糸メーカーのPHPを買収。東洋紡、PHPどちらの糸を使っても、東洋紡の品質の基布を織れる生産体制をグローバルに整えてきた。東洋紡は敦賀に年1万6000トン、PHPは独、米、中国合計で年3万1000トン強の原糸生産能力を持つ。今回の増強で東洋紡・PHPの原糸生産能力は約5万トンになる。

 東洋紡がPHPを買収したことで、PHP顧客の欧州自動車メーカーからは、糸から基布までグループで一貫生産してほしいとの要望が増加している。このため数年後、欧州に基布工場を設ける計画もある。

ファシリテーター・峯岸研一氏の見方


 東洋紡がエアバッグ事業に参入したのは1992-3年頃です。旧アクゾ(現PHP)特許を導入。ナイロン66・強力糸を織布、その生機を収縮(シュリンキング)加工することで、それまで国内で一般的だったシリコーン・コーティング品ではなく、ノン・コーティング品を上市しました。ノン・コーティングエアバッグ基布はコンパクト性やコスト性に優れることが評価され、1990年代後半には運転席を中心にエアバッグ基布の国内トップシエアを占めるまでになり、現在に至っています。

 東洋紡のエアバッグ基布は日本からタイ、中国、そして米国へ生産拠点を拡大しています。とことろが、原糸供給は米国を除いて日本・敦賀工場に拘ってきました。

 同社のエアバッグ事業の転機になるのは、2014年にPHPファイバーをインドラマグループとともに傘下に収めたことです。買収により原糸生産体制が拡大しただけに、強みとする原糸から基布までの一貫生産体制を世界的に展開しようとする今回の動きは当然です。

 しかし、PHPファイバーはオートリブなど世界的なエアバッグモジュールメーカーへの原糸供給も重要な事業です。しかも、欧米や日本で装着率アップが見込まれるサイドカーテンシールドエアバッグ基布にはコーティング品が必須ですし、サイドカーテンシールドエアバッグ基布へのスペックインは東洋紡のエアバッグ事業の課題でもあります。
<続きはコメント欄で>

 

日刊工業新聞2016年1月6日素材

COMMENT

峯岸研一
フリーランス

エアバッグ基布向けナイロン66・強力糸の主要サプライヤーはインヴィスタグループ、東洋紡・PHPグループ、旭化成せんいと多くありません。その中では東レグループは全面的に原糸ー基布までの一貫生産体制へ切り替えています。エアバッグ向け原糸の需要は今後も増加が見込まれています。それだけに東洋紡・PHPグループが原糸売りと原糸ー基布の一貫生産を、どのようにバランスさせていくかは、私だけでなくエアバッグモジュールメーカーにとっても注目されます。

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