ROEを構成する二つの指標で分かる、いすゞ自動車の特徴
いすゞ自動車は「ESG(環境・社会・企業統治)を視点にした経営への進化」(片山正則社長)に取り組んでおり、ESGに関わる株主価値向上を重視し自己資本当期利益率(ROE)を引き上げる。コロナ禍で業績が落ち込み2021年3月期のROEは4・3%にまで悪化したが、3カ年の中期経営計画の最終年度である24年3月期にROE12・5%、その先の26年3月期には15・0%を目指す。
ROEは三つの指標に分解できる。資産効率性を測る「総資産回転率」、収益性を測る「売上高当期利益率」、経営の安定性を測る「財務レバレッジ」だ。最初の二つの指標で同業の日野自動車と比較すると、いすゞの特徴が見えてくる。
コロナ禍前の19年3月期におけるROE、総資産回転率、売上高当期利益率は、いすゞが12・3%、1・02回、5・3%だった。一方、日野自は10・5%、1・50回、2・8%だった。
両社の直近5年間の業績を見ても総資産回転率は日野自が、売上高当期利益率はいすゞが高い。いすゞは商用トラックだけでなく、利益率の良いピックアップトラックも取り扱う。それが日野自よりも利益率が高く出やすい理由に挙げられる。翻って、ピックアップトラックよりも商用トラックの方が単価が高く、売上高を総資産で割って計算する総資産回転率は日野自よりも低くなりやすいと考えられる。
いすゞにとって資産効率改善はROEの向上で課題となる。ただ1兆円近い利益剰余金や、21年4月に完了したUDトラックスの買収もあり、総資産は21年12月末で2兆7000億円(21年3月末は2兆2000億円)まで膨らんでいる。
24年3月期のROE12・5%目標は順調に事業展開していけば達成する可能性は高いが、中計で掲げる期間平均40%の配当性向を前提とするとROEは「そこで頭打ちとなる」と木下寿英SMBC日興証券アナリストは見ている。ROE15・0%達成に向け資産効率を改善するには自社株買いなど「資本政策に頼らざるを得ない」と木下アナリストは指摘する。いすゞも今後、自己資本を減らせる自社株買いを進める構えでおり、26年3月期のROE目標の実現を目指す。